コンテンツ協働ハブ/背景
コンテンツ協働ハブ
ウィキメディア運動内のコンテンツ提携先と円滑な協働を
背景
協働すると手の届く機会はたくさん
社会には、フリーな知識を生み出す複数の担い手がいて、世界との共有を目指しています。これまで長い年月が流れ、ウィキメディアの世界各地のコミュニティは趣旨に賛同しフリーな知識の提供を申し出た機関と手を組んできました。ウィキメディア運動は何年もの間、知識の普及と一般の関与をめぐり、独自の基盤を提供してきました。
素晴らしい成果を数え上げることができますし、その反面、これまでこの作業はそれぞれの機関や個人がまるで離れ小島のようにぽつんポツンと実践して、統一の取れたシステムもネットワークもありませんでした。この状況を変えるには、まず根源となる地球の遺産とコンテンツ提携関係のインフラ構築が求められます。
現時点でウィキメディア運動はパートナー関係を事案単位で補佐することはあっても、それぞれの資質は非常に差異が目立ち、同列に並べて論じることは困難でした。ウィキメディア運動には堅固な国際支援ネットワークもなければ、すぐに使える技術的な提携関係のインフラもなく、コンテンツ協働に真の意味で公平性をもたらすことができないままでした。これが足かせとなってグローバルな規模で戦略パートナー関係を構築するにもブレーキがかかり、趣旨に賛同する機関との連合も難しかったのです。
当ハブはグローバルなウィキメディア運動にさまざまなサービスを提供し、調整と協働関係を増やす役に立ちます。これによりウィキメディアの提携団体もウィキメディア財団(以下WMF)も、より効率良く動き回って提携先の機関からウィキメディアのプラットフォーム類に大量のコンテンツをもたらすことができ、いくつか例を挙げるなら美術館図書館公文書館博物館(略称GLAM※1)、市民社会の組織※2、公的機関※3、研究機関、国際連合の機関などが対象の一部です。(※:1=Galleries, Libraries, Archives, and Museums。2=civil society organizations。3=authorities。)
提携団体とボランティアの皆さんの絆とエンパワーに役立ち、世界中で活発な運動を支えます。長期的な目標は、コンテンツ協働関係にとって主要なインフラを開発して保守することに置き、ウィキメディア運動との適切で効果的な結びつきを円滑にしていきます。
ウィキメディアが届く範囲
ウィキペディアは全世界を対象とした唯一のプラットフォームとして、個人や機関あるいは関連先が所有する知識やフリーな教材、文化的文書類やマルチメディアを結びつけ、世界の300超の言語の5億人の人々が属するグローバルで多言語のコミュニティに提供しています。
世界各地の機関の多くはウィキメディアのボランティアの皆さんや提携団体との結びつきを模索し、それぞれが所有する情報や知識を世界の閲覧者に共有したり、フリーな知識のエコシステムに参画したいと願っています。
問題点・課題
世界のどちらを向いても重要で価値の高いコンテンツの協働相手があるのですが、ウィキメディア運動の側から見ると、先方と効果的に関与しようとすると能力と許容範囲が大きく異なります。これが素因となって、世界のさまざまな地域で知識の不平等な範囲が続いてしまい、地元のボランティアが地元に関連したコンテンツを自分たちの母語で強化したくても機会が限られ、提携関係のネットワークがあるのにボランティアに新規に参加するチャンスも狭まってしまいます。
コンテンツ協働が世界各地でどんどん実施されるように、また作業を主導していこうと関心を寄せるボランティアの皆さんやローカルの組織職員を補佐する上でも、努力しなければなりません。実践型の支援や適性開発の機会が欠いたり、滑らかに作動して簡単に使えるツール、財政的なリソースの手当、重要なコンテンツや人脈、いずれかが不足していたとしても、一定の投資をすると目覚ましい改善が見込まれます。
コンテンツ協働のパートナーには GLAM コミュニティなどがあり、こちらは私たちとの協働において、場合によっては複雑な要素が想定されますが、コンテンツ協働に求められる技術的なインフラの欠如、すなわちアップロードや編集、分析とデータ同期が大量一括処理できるかどうかが鍵になります。[1]
私たちのプラットフォームにはさまざまな可能性があり、具体化は今後の課題です。ウィキメディアのプラットフォームにコンテンツをある程度の規模の量で共有するには、現状では高度な技能を備えた人材が求められ、通常では手の届かない※多くのツールセットを熟知していて、しかもそれらは保守や継続した開発が行わないままにされがちです。(※=difficult-to-find) このように不安定な状況がしばしば起因となり、コンテンツのパートナーはウィキメディアのプラットフォームに協力を申し出たばかりに、非常にストレスを感じる経験に陥りがちで、これらのプロジェクトに精通したボランティアもしくは提携団体に依存すると、実に間口の狭い相手とのやりとりに終始してしまいます。これは関与できるコミュニティの数を大幅に減らしてしまい、新規参加者もその例外ではありません。
ウィキメディア・スウェーデン協会の提言
2030 運動戦略方向性※の述べるところによると、ウィキメディアはフリーな知識のエコシステムと不可分なインフラになるとあり、さらにその理想を共有する人は誰でも私たちと共に歩めるとも記しています。これには以下を含めて、パートナー関係に関する複数の勧告が示してあります。(※=strategic direction)
このイニシアティブを実現する作業は、運動戦略ワークグループ群※から発信する勧告と融合します。その焦点は状況と時間の経過に合わせて調整し、常にコンテンツ協働の相手およびウィキメディアのコミュニティの長期的なニーズに最適化する点に当てます。実現するにはコンテンツ協働で提携する相手に向けた社会技術的な支援体制を調整して、その結果、協働パートナーとウィキメディアの全てのコミュニティが互いに簡便に作業し、支援の一環に加わり、利用者にやさしいツールや技術構造を利用できるようにします。(※Movement Strategy Working Groups)
ウィキメディア・スウェーデン協会※1は GLAM ※2の技術開発に長期にわたって関与しており、国際性に焦点を当ててきました。国際的な GLAM プロジェクトで専門性を備えるにいたり、ネットワーク化した国際的な助成金の機会は、ますます伸展しています。(※:1=Wikimedia Sverige。2=GLAM:頭字語、G・美術館+L・図書館+A・公文書館+M・博物館。)
ウィキメディア・スウェーデン協会は当該の分野のニーズ、必要なロードマップやリソースを今後とも調査します。これらの取り組みはすぐれて参加型の方法で設計しており共創イニシアチブにつなぐこと、そのために当協会では多様で世界を代表するパイロット版プロジェクトを創出して、なおかつ、コンテンツ提携関係に役立つ社会インフラ作りにも着手します。 このいわば社会実験には、利害関係者との議論の枠組みをもたらし、将来、テーマ別ハブが取り組める範囲を見極め、取り組むべき対象を特定するという目的があります。
プラン策定は、ローカルの提携団体はもっと運動の主導権を拡大し、提携団体こそソフトウェア開発の過程に活発に参加する方が良いという観点に基づきます。現行のモデルと対照すると、以下のような利点が見られます。
- リスク分散により、運動をもっと堅牢にすること。
- ローカルの経験値を強みにすること。
- 技術開発の責任をアメリカ合衆国単体から分散させ、ウィキメディア運動の地位を真にグローバルな運動として、多言語化の確立を推進すること。
- 状況の有利さや協働作業がもたらす有益性を実感すること。
- ウィキメディア運動の他の部分で、自分たちが主体である、動かしているという感覚を強化すること。
- より地理的に広範な範囲から資金源を募ること。
活動の資金源
ウィキメディア・スウェーデン協会は現在、ウィキメディア財団より1回限定の助成金を受けており、外部の資金源や寄付金と組み合わせています。
募金活動をめぐり、旧来のウィキメディア製品チーム※1提供の助成金を使ってウィキメディア財団のアドバンメント担当※2と意見交換を進めてきました。長い目で見た目標とは、顕著な資金の流れを築いてコンテンツ提携関係に関わる将来のイニシアティブの大部分に充当することであり、これに沿って、ローカル単位の募金能力は拡充されていくと見込まれます。私たちのこの作業を推進するため、今後も外部のプロジェクト助成金に申請を重ねていく所存です。(※:1=WMF Product team。2=WMF Advancement。)
ウィキメディアの組織やその他のパートナーとのさまざまな機会では、作業の分野ごとに経費の共同管理を実現することもあります。
注記
- ↑ GLAM はここでは以下のように大まかに定義します。〈典型的な〉文化および学術機関との協働に加え、個人の収集事業や草の根のイニシアティブ※、地域社会の資料保存活動ほかも対象です。(※=bottom-up initiatives)