Fundraising/2021-22 Report/ja
はじめに
この報告書をご覧いただくことでおわかりいただけるかと思いますが、ウィキメディア財団の資金の大半は、世界中の個人の寄付者の皆様から寄せられています。これらのご寄付が、月間閲覧数160億回に上るウィキペディアを支える世界一流の技術基盤を可能にしています。また、法的および提言活動を通じて世界の「無償の知識」を守り、300以上の言語で5,900万件の記事を作成してきた素晴らしいボランティア編集者を支援できています。私たちは毎年この募金活動年次報告書を作成し、世界中の何百万人もの寄付者の皆様との関わりから学んだことを共有しています。
これはユニークな報告書です。私たちの知る限り、主要な慈善団体でこの種の資金調達情報を透明性をもって一般と共有するのはウィキメディア財団だけです。当財団はまた、年間を通じて読者、ボランティア、寄付者のコミュニティに情報提供するために、他にも報告書を発行しています。これには、私たちがもたらすインパクトに焦点を当てた年次報告書, や、全体的な財務活動や財務状況を説明する 監査済み財務報告書 などが含まれます。
多くの方々の行動と協力によって、ウィキメディア財団はレジリエンス(適応力)を高め、独立性を保つことができます。2013年、ウィキメディア財団理事会は、今日までの私たちの資金調達戦略の原動力となってきた基本理念を定義しました。この「独立性」の基本理念は、読者のご寄付がウィキメディア財団のプロジェクト群にもたらす価値について言及しています。
「ウィキメディア財団の役割の一つは、プロジェクトの自由と独立性が決して損なわれないようにすることです。そのために、またそれが非常に効果的であるために、私たちはウィキメディア財団の資金の大半を世界中の複数国の多数の小口寄付者から得るという収益戦略を意図的に選択しています。このモデルは、リスクを制限し、特定の組織や個人が私たちの意思決定に影響を与える可能性を減らすことで独立性を維持します。また、プロジェクトの読者に注意を促すことで、私たちの資金調達のミッションとその実践法の足並みを揃えます。
ウィキメディア財団は、記事編集の品位とプロジェクトの独立性が損なわないよう、またそれが損なわれたと思われる危険を避けるため、プロジェクトに広告を載せたり、広告と受け取られる可能性があるものを載せることには極めて消極的です。それが絶対に起こらないとは言いません。プロジェクトを閉鎖するか、広告を受け入れるかの選択を迫られたら、私たちは広告の掲載を検討するでしょう。しかし、その可能性は極めて低く、よほど深刻な状況下にとどまります。」
約10年が経った今も、世界中の寄付者の継続的かつ寛大なご支援により、ウィキペディアは広告のない独立した状態を保てています。ボランティアと寄付者から成る素晴らしいコミュニティのおかげで、ウィキペディアは繁栄し、成長を続け、安定した財政基盤を維持しています。これは、世界経済が混乱期に突入した今、極めて重要なことです。
毎年さらなる信頼を寄せてくださる寄付者の皆様に心から感謝いたします。私たちが「すべての人が、"知の総和"を自由に共有できる世界 」への道を歩み続けられているのは、他ならぬ皆様のおかげです。
数字でみる一年
大陸別の寄付金総額
募金メッセージの翻訳や各地域へのローカライズについてのご意見・ご感想は、fr-localization@wikimedia.org までご連絡ください。
寄付金総額の内訳
寄付金総額:1億6,523万2,309米ドル(寄付件数:1,300万件以上)
本年度は前年比10%の収入増加
平均寄付金額は 0.28米ドル減少
数字でみる一年:英語圏での募金活動
毎年最も大規模に行われる英語圏での募金活動は、6カ国(オーストラリア、カナダ、アイルランド、英国、米国、ニュージーランド)にまたいで展開されます。 この募金活動は、ウィキメディア財団の年間収入の約50%をもたらします。
この大規模なキャンペーンに備えて、新会計年度初期の7月から、バナーの"プレテスト"(英語版ウィキペディア上で、読者に寄付を検討してもらうためのメッセージを試験的に表示)を毎週実施しています。このプレテストは、大量のご寄付を取扱うためのプロセスと技術システムの改善、寄付体験の向上、財務リスクの軽減、またより多くの読者の皆様にご寄付の機会を提供するために役立っています。
オンライン募金活動(英語圏):
種類別 収入内訳
2021〜2022会計年度
オンライン募金活動(2021~2022会計年度)
ウィキメディア財団は、世界中の読者からの個人的なご寄付を主な資金源としてきました。寄付者の多くはウィキペディアの読者で、私たちの募金呼びかけのメッセージが表示されたときにたまたまウェブサイトを訪れていた人たちです。私たちの募金活動は、読者に対して、ウィキペディアがなぜ広告や購読料に依存する営利目的のウェブサイトと異なるのか、また読者による寄付者としての貢献がウィキペディアの独立と発展にどう不可欠なのかを伝えることを目指しています。
メール、ウェブ上のバナー、アプリを通じて、世界におけるウィキペディアのユニークな価値と、読者支援型の収入モデルに基づいた継続支援の必要性について啓発しています。私たちの「無償の知識」のミッションを説明し、活動の繁栄を支えてくださる何百万人もの編集者、読者、寄稿者の皆様に感謝の意を表しています。私たちは、読者、寄付者、コミュニティメンバー、より広いインターネットからのフィードバックに基づいて、これらのメッセージを継続的に改善し、ウィキメディアが世界に与えるインパクトについて読者の皆様に共有しています。
新たにCEOに就任したマリアナ・イスカンデルのご紹介
新CEO(最高経営責任者)は、世界中の非営利団体で長年にわたるシニアレベルのリーダーシップ経験を有しています。2021年にウィキメディア財団に参画する以前は、南アフリカのHarambee Youth Employment AcceleratorのCEOを10年近く務めました。
マリアナと募金活動チームによる最初の取り組みの一つは、寄付者に送るお礼メールに彼女の声を反映させることでした。この新しいメールでは、寄付者の皆様への感謝の気持ちと、寄付者の支援によって世界中で知識の公平性を高められることに焦点を当てました。この最初のメールを皮切りに、今後もマリアナが寄付者の皆様とつながりを持てる方法を模索し続けていきます。
毎月の定期寄付プログラムの拡充
「ウィキペディアに毎月5ポンドを寄付し続けています。質の高い情報を瞬時に入手できることに常に感謝しています。」(イギリス在住の支援者)
個人の読者からの1回限りのご寄付は、ウィキペディアのグローバルな募金活動に欠かせないご支援です。今後も読者の皆様に1回限りのご寄付の機会を提供しつつ、皆様の状況や文化的背景に合ったご寄付の機会を広げられるよう努力を続けていきます。
1回限りのご寄付に加えて、定期的な支援を希望してくださる寄付者の皆様が世界中に大勢いらっしゃることに気がつきました。
毎月の定期寄付プログラムを推進するようになってから、一回限りのご寄付ではなく、毎月の定期寄付を検討してくださる読者の皆様が大幅に増えました。このような継続的なご支援は、組織の将来に向けて計画、準備するために必要不可欠です。
今年は、全世界で64万5,000人以上の皆様が毎月の定期寄付をしてくださり、前年会計年度比31.3%の増加となりました。
私たちは、オンラインバナーや寄付ページにおいて、毎月の定期寄付の重要性を発信しています:
毎月の定期寄付者の数が増えるにつれて、私たちは大切な皆様の寄付体験の改善に努めています。最初の試みとして、定期寄付者の一部の方々に対して、まもなく募金活動が開始することを知らせるメールを送り、バナーによるサイト閲覧の中断を避ける方法をお伝えしました。今後も毎月の定期寄付者の皆様に情報を共有し、皆様との関わりを強化するための工夫を続けていきます。
新たな募金活動
世界中の読者が私たちの寄付者コミュニティに参加する機会を得ることは、私たちの組織としてのレジリエンス(適応力)を強化します。2020年、私たちは久しぶりにインド版ウィキペディアでの募金活動を再開し、重要なマイルストーンに到達しました。2022年、私たちはこれらの寄付者に初めて電子メールを送り、財団とウィキメディア運動、また何千人もの支援者コミュニティについて紹介しました。この募金活動開始前のメッセージでは、私たちのミッションを称え、ウィキメディア運動の活動内容に焦点を当てました。今後も、インドの読者の皆様との関係を育んでいくことを楽しみにしています。
インドでの募金活動事前電子メール:
支払い方法の改善
私たちの寄付金処理チームは、各国での支払い方法の改善と拡充に努め、スムーズな寄付体験の提供を目指しています。現在、世界中で28種の通貨と29種の支払い方法によるご寄付に対応しています。チームは今年、より多くの方によるオンライン寄付を可能にしました。多数国でのApple Pay、南アフリカ国内での銀行送金(StitchとACH)、そしてブラジルでのPIX(ご寄付の63%以上を占める)などです。Apple Payを通じたご寄付は、繁忙期のオンライン寄付全体の10%以上を占めました。資金調達の目標を達成する一方で、技術的な中断がないように、決済処理インフラに関する計画とその実践を続けました。より多くの皆様が引き続き私たちの活動を支援できるよう、来年以降も決済サービスの継続的な改善に取り組んでいきます。
ウィキペディアのアプリとポータル・バナー
ウィキペディアの記事に表示される募金用バナーに加えて、ウィキペディアのアプリと、ホームページポータル(Wikipedia.org)に募金用バナーを表示しています。これらのチャンネルは、より多くの読者の皆様にご寄付を検討していただくための重要な場所です。昨年、iOSユーザーに導入されたApple Payはアプリ経由の募金活動で人気を占め、アプリ内バナーのご寄付の3分の1を占めました。
ポータル・バナーの主な成果:
2021〜2022年会計年度には、オーストラリア、カナダ、フランス、インド、アイルランド、ニュージーランド、スウェーデン、イギリス、アメリカでポータルバナーを展開しました。寄付金額の総額は、132万米ドルでした。また、ポータルサイト(Wikipedia.org)のフッターに、寄付のリンクを常設しました。
ポータル上の寄付リンクのイメージ:
大型寄付と基金
大型寄付者は、ウィキメディア財団に1,000米ドル以上を寄付してくださった方、あるいは ドナー・アドバイズド・ファンド, 給与控除, マッチングギフトなど、他の特定の方法で寄付をしてくださった皆様です。 2021〜2022年会計年度は、前年度比13%増の2,080万米ドル[4] が大型寄付者から集まり、この増加は財団のミッションを加速させることに貢献しました。大型寄付者の数は、18,000人を超えました。2,700人超が1,000米ドル以上の大型寄付を寄せてくださり、その他16,000人の皆様が大型寄付に該当するドナー・アドバイズド・ファンドや給与控除などの方法で支援してくださいました。
多くの方が、ウィキメディア財団の大口寄付者様への特別な感謝の意を表す 支援者ページ, で紹介されることを選んでいます。
マッチングギフト
この一年、企業の社会貢献プログラムを通じて44,668件以上のご寄付が寄せられました。これらのマッチングギフトと給与控除プログラムでは、従業員によるウィキメディア財団へのご寄付を雇用主がマッチさせることで、元の寄付金額を数倍にします。
これらのご寄付の総額は176万米ドルに上り、Google(グーグル)からの42.8万米ドル、Microsoft(マイクロソフト)からの約20.7万米ドル、Apple(アップル)からの12.1万米ドルの従業員主導のご寄付を含みます。
ウィキメディア基金
ウィキメディア財団が2016年に設立した ウィキメディア基金は、ウィキペディアとその他のウィキメディアのプロジェクト群の将来を保証するための保管基金です。2021〜2022 会計年度には、直接のご寄付、遺言でウィキメディアに贈り物を残した個人からの遺贈、適格慈善分配金 (QCD)またはIRA慈善ロールオーバー)などのさまざまな方法で、ウィキメディア基金に1,350万米ドルが集まりました。
一年を通して、400以上の人々や機関がウィキメディア基金に1,000米ドル以上の寄付をしてくださいました。これにはアルカディア基金からの200万米ドル、Amazon(アマゾン)からの100万米ドルのご寄付が含まれます。その他、60万人以上の皆様から、平均13.91米ドルのご寄付がウィキメディア基金に寄せられました。
また2021〜2022 会計年度には、701名がレガシーギフト(遺贈寄付)を約束してくださり、これは寄付金の長期的な成功のための重要な要素となっています。遺贈は、将来のご寄付のための誓約を集める方法で、最も一般的には遺言によるご寄付と受益者指定によるご寄付を指します。私たちは、米国で法的な遺言書を作成するための無料のオンラインツール FreeWill社と提携し、ウィキメディア基金への遺贈を簡単に行えるようにしました。基金への支援者の多くは、基金の公式サイトの支援者ページや、ウィキペディア・レガシー・ソサエティーのメンバーとして紹介されることを選んでいます。
支援者からのメッセージ
2021〜2022会計年度の期間中、当財団の支援者対応チームは、40言語で17万7,352件の問い合わせに対応しました。これらの寄付者の一部は、ウィキペディアに対する感謝の気持ち、私たちのミッションを支援することを決めた理由、今後の改善方法などについて連絡をくださいました。以下にその一部をご紹介します。
「私からのささやかな応援の気持ちを受け取ってください。また、ウィキペディアを存続させ、誰の所有物にもせず、その品位、品質、神聖さを維持し、世界中の誰もがアクセスできるようにしてくれていることに心から感謝します。特に、利益追求を優先する今日のデジタル世界では、妥協せずに継続することがいかに難しいか。感謝してもしきれません。」(インド在住の支援者)
「あなたは私が世界で一番知りたいことを教えてくれる第一の情報源です。」(アメリカ在住の支援者)
「私は94歳を迎える老齢の研究者ですが、脳を活性化させるためにウィキペディアを頻繁に利用しています。得た情報に自信を持てること、特に、裏付けとなる参考文献を頻繁にたどることができることに感謝しています。」(南アフリカ在住の支援者)
「私はスコットランド西海岸の小さな島で大型バスを運転していますが、ウィキペディアから得た情報を乗客に伝えています。」 (イギリス在住の支援者)
「あなたを含むウィキメディア財団の多くの人々が、探求心や好奇心に満ちた人々に知識の贈り物を提供してくださっていること、また誤った情報に対抗するための情報源を提供してくださることに感謝します。再び寄付をすることができるようになったときのために、ウィキメディアのことを心に留めておくつもりです。ありがとうございます!」(カナダ在住の支援者)
「私たちはしばしば、その膨大な仕事量を意識せず、不可能はないという感覚に陥り、物事への権利を当然に所有していると考えてしまいがちです。あなたの作品は傑作であり、普遍的です。あなたの百科事典に、ほぼ毎日無理なくアクセスできることに感謝します。あなたの資金援助の訴えは、私たちがひとつの世界、同じ歴史の一員であることを思い出させてくれます。財団、チーム、そしてあなた自身のために、与えた分以上の幸せが返ってくることを願っています。」(フランス在住の支援者)
「ウィキペディアは何としても守らなければならない宝物です。信頼できる手元の知識ツールであり、その独立性はいまかつてないほど必要とされています。これからもがんばってください!」(イタリア在住の支援者)
「私はウィキペディアが大好きで、毎日使っています。ウィキペディアのために働くみなさんを愛し、尊敬しています。このご時世、明るい未来と陰鬱で腐敗した世界を分けるのは、信頼できる独立した情報源であると信じています。」(スウェーデン在住の支援者)
「私は看護師を教える立場にいます。生徒に査読付き学術雑誌を使わせようとしますが、ウィキペディアこそ素晴らしい学習の機会を提供してくれます。自分の情報収集のためにもウィキペディアを定期的に使用しています。優れた百科事典を提供してくださってありがとうございます。」(ニュージーランド在住の支援者)
「中国語には、「みんなのために薪を探す人を吹雪の中で凍らせてはいけない」という言い回しがあります。ウィキペディアの活動には本当に感謝しています。乾杯!」(オーストラリア在住の支援者)
このレポートについて
最後まで募金活動年次報告書をお読みいただきありがとうございます。 このレポートについてのご意見・ご感想は、ウェブサイトにお寄せください 。ご意見・ご質問にはできる限りお答えいたします。ウィキメディア財団の募金活動に関する情報を喜んで共有いたします。皆様からのフィードバックを心よりお待ちしています。
- ↑ 「その他」には、ウィキペディアのサイドバー、ウィキメディア財団の「その他に寄付する方法」ページ、ウィキペディアのアプリ、ポータルサイト上のバナー、各種ソーシャルメディア、小切手、匿名や自発的な寄付(例: 「donate.wikimedia.org」への直接のアクセス)や、オフラインのご寄付が含まれます。
- ↑ 「チャプターによる寄付」とは、現在独自のバナーによる募金活動を展開している2つの支部、ウィキメディア・ドイツとウィキメディア・スイスによって集められた資金を指します。各支部の募金活動で寄せられたご寄付は、より広い運動を支援するためにウィキメディア財団に移されます。
- ↑ この募金活動報告書に記載されている金額は、米国会計基準に準拠しておらず、独立監査人の報告書および内国歳入庁の納税申告書(フォーム990)に記載されている収入とは異なります。この報告書は、寄付が行われた時点の数値を反映しています。2022年、世界の多くの通貨が米ドルに対して下落しました。ウィキメディアの独立監査報告書は、2022年6月30日の当財団の資産価値を米ドルで表したものです。そのため、ここで報告された財務合計と納税申告書(フォーム990)には差異があります。最後に、過年度の数値は、キャンセルされたご寄付を除外している場合があります。
- ↑ ドナー・アドバイズド・ファンドなどの方法で寄せられた1,000米ドル未満のご寄付を含めると、大型寄付者の寄付金総額は2,080万米ドルとなります。