The Wikipedia Library/1Lib1Ref/2019年1月
2019年レポート
概要
1月のキャンペーン#1Lib1Refは活況を見せ参加者の熱意が広がりました。記事の追加が顕著で、新規参加者の伸びとともに言語版や機関に競争心が芽生えたようです。この恒例の#1Lib1Refキャンペーンは今回、最高の盛り上がりを記録し、新興のコミュニティや言語版の参加が特に目立ちます。もっとも活発だったフランス語版ウィキペディは初のトップ入りで、投稿の実に33%をキャンペーン中に達成しています。結果の集計を終え、#1Lib1Refには多様なコミュニティ群へのアウトリーチ支援の可能性が秘められていると予想しています。
組織
準備期間中にキャンペーンの公式サイトでデザインを一新し、閲覧者それぞれの意図 (編集・イベント主催・情報共有) に直結する最適の道筋に案内しています
ここで言う道筋とは、ハウツー (動画・GIF・1ページに集約したJPEG画像) のほか、事例集やイベント主催者向けのガイド、事前に準備した投稿ほかの整備された情報源を入手できる手段で、SNSで楽にキャンペーンの共有ができました。また中心となるキャンペーン動画は翻訳対象に指定され、地域化によってキャンペーンの訴求度を確保できたのです。主催者ページには事例集をご用意、過去の経験則や成功のコツを紹介して新規の主催者を支援しました。また共有の節では、SNSのリンクを埋め込んで新規記事を迅速に共有できる工夫が施してあります。
またキャンペーンに参加するグローバルチームをきずくため連携して募集を行い、それぞれのローカルの状況に合わせたアウトリーチ活動と、オンラインとオフラインでキャンペーン広報の情報発信と普及が期待されました。
- 大使: コミュニティ参加の経験が長く、すでに1Lib1Ref活動主催の経歴があり、#1Lib1Refキャンペーンの一環としてイベントの参加もしくは主催を希望する人を進んで支援すること。
- 代表者: 熱意のあるボランティアとして、図書館員や図書館の新規参加を勧誘したり、自分の所属する機関にキャンペーン促進と参加を働きかけること。
- 拡散係: 1Lib1Refに関する情報拡散に関心があり、キャンペーンの準備期間から開催中および終了後にわたって広報活動に熱心に取り組むこと。
大きく出遅れた点は、果たして今年はキャンペーンがあるかどうか 皆さんに周知しないまま、ぎりぎりの段階で開催を発表する結果になったことが挙げられます。このキャンペーンはウィキメディア運動の他のグローバルな企画と比べると、例えばウィキラブ・モニュメントやウィキラブ地球、ウィキラブ・アフリカほど開催期間が定着していないことを思い知らされ、(1月と5月の) キャンペーン実施期間を公開で明確に決めることが、次回以降、主催者の不信感や準備の遅れを防ぐ方策と考えられます。
ツール
今回もハッシュタグツールを優先的に使い、プロジェクト群を横断してキャンペーン関連の編集を追跡しました。データ収集に問題が生じたものの、前回までと比較すると対象プロジェクトの範囲が拡大し、効率的にボット編集を除外しました。キャンペーンの大部分で、ほぼリアルタイムの統計を取ることができるようになりました。
出典を補うCitation Huntには前回のキャンペーン以降、いくつか改良が加えられ、利便性が格段に向上しました。新主催者には使いやすさと観衆への説明が簡単な点がおおむね好評でした。今年のキャンペーンの成果として、新しい言語版が完成しました。
キャンペーンをローカルに追跡するには、Programs & Events Dashboardの活用が目立ちます。45プログラムの参加編集者合計464人が、キャンペーン中に新規に作成された500件を含む6千件超の編集を追跡したのです。それらプログラムのかなりの割合はカナダ全国編集大会の成果であり、さらにヨーロッパ、イスラエル、アフリカ、インド、アメリカでプログラムが行われています。
将来的にはハッシュタグツールをさらに改良し、ダッシュボードを使った追跡と分析の効率化、さらに組織間の競争を支援することも課題です。
コミュニティの関与
1月のキャンペーン時は熱意とエネルギーがあふれていました。メーリングリストの作成が、キャンペーン実施前から関心のある参加者をつないだことで、主催者から質問や提案をたくさん受け、キャンペーンの準備に反映することができました。
その過程にキャンペーン直後を含めると、実際に集会を開いたりオンライン開催のイベントは40を超えました。ウェビナー(ウェブ上のセミナー)を6回以上開催し、世界中の参加者を支援したため、SNSのほかにもコミュニティの参加形態が拡張されました。
2018年カナダキャンペーンは大きく拡張し、2019年にはケベック周辺に限定せず、カナダ全土の図書館を対象にイベントが展開されました。成果として英語版とフランス語版のどちらのウィキペディアも記事編集が大きく前進しました。参加者はキャンペーンの意義を理解しつつ、競争に勝ちたいという意欲に動かされ、友好的な競争の精神に賛同して参加を決めています。しかしながら、これらのグループからは同時に、ダッシュボードを改良して統計を追跡しやすくしてほしい、キャンペーンの開催期日をもっと早く発表してほしいという要望が寄せられています。
キャンペーンの5月開催では、参加者の大幅な増加はアフリカとアジア諸国で顕著で、アフリカではオンラインとオフラインで活動が合計8件実施され (地理的に南アフリカ、ガーナ、カメルーン、スーダンに拡散)、その他の国でも参加準備が進んでいました。南アフリカならびにインドで開催された活動はそれぞれ、ウィキマニア2018ならびにTWLConがウィキペディア図書館キャンペーンの前哨戦として機能した側面が大きかったようです。
英語版ウィキペディアでハッシュタグデータを分析したところ、新人編集者と、冬眠中だったのに活動を再開した編集者の参加が重みを示しましたが、2018年よりも参加はやや低率でした。逆にフランス語版ウィキペディアでは、むしろ新人編集者が微増で、活動再開組および現役編集者の増加率には遠く及びませんでした。セルビア語版ウィキペディアではほぼ全員が現役編集者だったに対し、ヘブライ語版では編集の半分以上が新人編集者の活動でした。他言語のウィキペディアの貢献も多大で小規模の言語版である程度の投稿がありましたが、人々はあいかわらず英語版ウィキペディアを編集しました。
統計
- ハッシュタグの最終集計は47言語にわたる編集1万877件にのぼり、そのうち編集3685件を達成したフランス語版ウィキペディアが首位です。
- キャンペーン開始後1時間で、プロジェクト7件に編集79件が実施されました。
- ダッシュボードの集計によると、1億3千万単語を追加
- 参加した編集者は708人
- 新規項目は516記事、更新記事は6110件。
- 10回以上の更新があったウィキの数は27、100回超は6、4つのウィキは1000回超を記録
- SNSでは利用者1310人が3831件を投稿、3億5千万人超が閲覧
- Twitterではキャンペーン関連のつぶやきが34カ国から1200万回の反応を獲得
- キャンペーンを取り上げたメディア関連の露出は40本。
評価
総評として、キャンペーンが以前は届かなかった地域や言語版に広がったという特徴が見えます。
参加総数に比べるとフィードバック調査の反応はやや低調でしたが、地理的にも参加形態上も、十分に反映されたサンプルが取れました。回答者の大部分はキャンペーンの効果を認め、高評価の対象として言語間の統計、TWL/WLUGにおけるキャンペーン参加者のリツィート件数に加え共同原理を挙げています。アンケート回答者からはダッシュボード改善、キャンペーン開催時期と日数の調整、さらにウィキデータをキャンペーンに巻き込むことが提言され、ローカルの言語版の情報源の活用、主催者向けキットの作成あるいは参加促進策の改善、さらにキャンペーン終了後の報告ミーティングなども改善の余地があると言います。
コミュニティからは、イベント助成金申請の遅れが原因でキャンペーン参加を見送った、時間面でキャンペーンの時期と長さに対応できなかった、あるいはコミュニティの広い理解が得られなかったという声も寄せられています。
今後の予定
このキャンペーンは毎年恒例の活動に採用され、1月、5月の年2回実施するものです。それに加えてキャンペーン期間の延長が参加者拡大のきっかけとなるはずです。 その他、詳細情報が提供される今後の予定はこちら。
- ダッシュボードを改良して参考文献の追加件数を追跡という課題の意義を検証
- ハッシュタグツールを採用してデータ関連の問題を提起
- ダッシュボードとハッシュタグで情報を橋渡し
- グローバルチームとの対話用に固有のプラットフォームを創設する
- 主催者が計画に使える期間を設けるため、共通の日程表を公表して管理する