User:Tomos/Notes on Japanese court cases
個人的な備忘録の類です。
各判例について気になる点をメモしているので、必ずしも正確な要約などにはなっていません。
リンク集
edit知的所有権判例集: http://courtdomino2.courts.go.jp/chizai.nsf/
日本ユニ著作権センター 「裁判の記録」(判例紹介。一部全文掲載): http://www31.ocn.ne.jp/~jucccopyright/
Netlaw 荒竹純一(判例紹介と全文掲載): http://www.netlaw.co.jp/hanrei/index.html
著作権
edit- 部分転載が複製になる場合と、翻案になる場合の境界は何か?
- ある文章が別の目的に用いられた場合(ある町の名物についての記述が、ある町の説明として利用された場合)それは翻案権の問題なのか? 複製権の問題なのか? =>複製権のよう
- ある文章が変更された場合、それは同一性保持権の侵害なのか、翻案権の侵害なのか? 両方が同時に成り立つこともありうるのか? (人格権と財産権というところで区別される?)
- 有限の選択肢の中からの選択に創作性が認められるか?
- 思想・感情の表現は、作者の意図から考えるのか、読者の観点から考えるのか?
同一性保持権
- 東京地裁 H13 ワ 23818
問題:格闘系コンピュータゲームのデータを一部改変して、キャラクタを裸にしてプレイする方法を広めた会社を相手どって、ゲームの開発会社が損害賠償を求めたもの。翻案権または同一性保持権の侵害としている。
判決:同一性保持権の侵害とされた。
他:現実に利用行為を行っていない者に責任を負わせる理由となる2つの条件(利用者がその者の管理下にあり、その者は利用によって利益を得ている)についても議論がされている。これらの条件に本件はあてはまらないけれども、そのような条件にあてはまる者でなくても、不法行為責任を負わせることができる、という判断を示している。
- 大阪高裁 H09 ネ 3587
- (大阪地裁 H08 ワ 12221)
問題:原告が制作した恋愛シミュレーションゲーム用の独自のメモリーカードを、被告が製造、販売して、元々想定されていなかった展開が実現できるようにした。これが同一性保持権の侵害にあたると原告が主張した。一審ではメモリーカード上に保存されていたデータに関連して複製権侵害は認められたが、同一性保持権侵害は否定された。
判決:問題となったメモリーカードを使用してゲームをプレイすることは同一性保持権の侵害にあたる。被告=被控訴人はその侵害の主体だと考えることができる。
編集著作権
- 東京地裁 H8 ワ 9325
問題:タウンページの職業分類データベースを転用して、販売した会社が被告。原告は日本電信電話株式会社。
判決:タウンページの職業分類は、政府の分類とは異なる独自のものであり、創作性がある。この分類を転用した被告は著作権を侵害している。
- 大阪地裁 H14 ワ 13194
問題:原告は写真家で、花の写真と花言葉を組み合わせて本にしたものを販売していた。被告Aは種苗会社で、原告の写真を無断でパンフレットに利用したとされた。被告Bは、そのパンフレットの内容を、原告の許可なしにウェブページ上で利用したとされた。
被告Aは、原告が著作権を有しておらず、原告の作品に対価を支払った別の団体が著作権を持ち、かつ、被告Aに許諾を与えたとした。被告Bは、被告Aから許諾を得たとした。但し、被告Aは許諾を与えていないとしている。
判決:花の写真と花言葉を組み合わせたものは、全体として創作性がある。(感情・思想の表現になっている)花言葉は従来からあるものの流用も多いが、独自に選択、創作されている。その選択が思想の表現になっている。被告Aは複製権侵害、Bは公衆送信権侵害にあたるとされた。
- 東京高裁 S59 ネ 1446
- 東京地裁 S50 ワ 480
問題:原告は、アメリカ独特の英単語を選択し、アメリカのマスメディアから選択した用例などの解説を付して発行した。被告も同様。原告は、被告が著作権を侵害したとしている。(実際には被告は出版社と著者の2者だが以下その点は考慮しない。)
判決:個々の文例などは全てメディアから採取されたもので、原告の創作的な表現ではないから、原告の著作物にはあたらない。そこで、この点に関しては、被告も原告の著作権侵害、著作人格権侵害を行った可能性はない。
更に、英和辞書などにもあてはまる話として、特定の語について複数の文例が考えにくい場合、あるいは、異なる文例を提示することが不適切な場合などには、文例が似ている、あるいは一致している場合でも、著作権侵害は起こらないとしている。反対に、ある語について適切な文例が幾つも考えられるにも関わらず、先行する他人の同類の著作物で使われているのと同じ文例を多く採用するのであれば、それは編集著作権の侵害になりうる。
このような編集著作権の侵害と、編集著作者の氏名表示権の侵害とを理由として、損害賠償を命じた。
地裁、高裁共に判断は似ており、損害賠償の額が異なる。他に、謝罪広告の請求などもあったが、却下。
その他:そもそも編集方針自体に創作性があったかどうかが問題にされていないのはどうしてなのか? 原告著作物の例文の選択における編集方針に特に創作性が認められず、凡庸なものに留まっているとしたら、それをコピーしたとしても著作権侵害にはならない、という論は成り立たないのだろうか?
- 名古屋地裁 ? 昭和62年3月18日判決
(控訴されたが判決前に和解)
問題:字引きの類がコピーされたことが問題となった。
判決:収録した字の選択やレイアウトについて創作性が認められ、被告に賠償が命じられた。
判決文中、編集著作権について述べた部分では、学問的な厳密性などがなくても、何らかの人間精神の活動の成果が認められればそれで足りる、としている。
全文:見当たらない。
以下にやや丁寧な解説、評釈がある。
http://www.otaru-uc.ac.jp/seminar/nagatuka/cases/youjien.html
- 東京地裁 H14 ワ 285
問題:学習関連の情報誌の出版社が、同類の後発誌を出版する出版社を相手どって著作権違反、不法行為などを理由に損害賠償を求めたもの。
判決:
原告の請求は却下。
50音順など既存の基準ではなく独自の方法で広告を配列していることなどから、情報誌が編集著作物にあたることは認められた。
ただし、素材となっている広告の広告主が5割程度しか一致していないこと、同じ広告主からの広告でも被告と原告とでは受け取った内容が異なっている場合があること、などを理由に、原告の雑誌と被告の雑誌は素材が異なる2つの編集著作物であり、素材が異なっているから、編集方法が似ていても、編集著作権侵害は起こりえないとした。
これは、編集方法自体はアイディアの領域に属するので編集著作権によっては保護されない、という理由によるもの。
編集著作権とデータベースの著作権の違いについて少し言及がある。データベースの著作権の場合には、データの編集方法にあたるデータベースの構造が、著作権保護の対象になる、つまり今回のようなケースについても、それがデータベースを舞台として起こったものであれば著作権侵害が認められた可能性がある、ということのよう。
不法行為は成立しないとした。表現の自由などを考えても、著作権を侵害しない場合には、特に相手に被害を与える目的でやっているなどの事情がない限りは問題がない、ということになると述べている。
アイディアの保護
- 東京地裁 H14 ワ 27550
問題:原告が取材旅行などをアレンジし、被告が書籍を執筆、出版した。原告は原稿の校正も行った。原告はこれを共同著作物だとし、被告はそうではないとした。
判決:共同著作物ではない。
- 東京高裁 H10 ネ 3676
- (東京地裁 H9 ワ 4112)
問題:控訴人=原告は6分冊で東京都の電話帳を発行する計画であったところ、1冊目しか発行されなかった。被控訴人=被告が、同じような企画に基づいた電話帳を発行したことは、控訴人=原告の企画自体に創作性があるので、著作権侵害になる、とした。
企画は、地域分冊にすること、分冊の区切り方をターミナル駅や商圏を考慮したものにすること、職業分類をニーズを考慮したものにすること、など。
原審では、そもそもそのような試みに著作権がないとされた。
判決:棄却された。
著作権は、第一冊目については認められた。それ以降については、表現がなされていない(未完成)ので保護の対象外とされた。
内的表現形式についての解釈が提示されており、電話帳の編集方針はそれにあたるものであり、ちょっとした思いつき程度であっても構わない(創作性を持ち、著作権保護の対象となる)としている。
同時に、非常に独創性が強いものではなく、誰でも思いつきそうな発想に基づくものである場合には、デッドコピー以外には保護されない。
全文: 一審(ユニ著作権センター) http://www.translan.com/jucc/precedent-1998-07-24b.html
- 東京地裁 H14 ワ 23214
問題:原告と被告は、ある児童教育用書籍シリーズの共同制作を行った。その後、両社の関係に変化が訪れて、原告は協力を停止。被告は新しいシリーズの刊行を行った。このシリーズは共同著作物であった前シリーズのアイディアを多く借用しており、翻案にあたる、と原告が訴えた。
判決:棄却。アイディア、企画は共通しているが、具体的な表現は異なっており、原作の本質的な特徴を感得できないとされる。被告はアイディアや企画などの保護を求めた(民法の不法行為にあたるとした)が、これらのアイディアが特に独創的でなかったことを指摘してその要求も棄却された。
その他:
著作権は著作物の制作と共に発生するものなので、それが発生する前から著作権の帰属を決めておくことはできない、というくだりがある。これはどういう含意を持つのか?
- 東京地裁 H13 ワ 16440
問題:ソフトウェアの画面が著作物であるかどうかを巡って争われた。他に不正競争防止法と不法行為についても。
判決:著作権侵害は認められた。不正競争防止法違反はなし。不法行為もなし。
管理者の削除義務
- 東京地裁 H15 ワ 15526
問題:
著作物が掲示板上に無断転載されたとし、掲示板の管理者に削除を求める通達を送ったが削除依頼手続きを通すようにとの返事しかなく、削除が遅れたため、損害賠償を求めた。
判決:
原告の請求は却下された。
転載があったことは認められた。
スレッド全体をひとつの著作物と考えた場合には引用の主従関係が成り立つという被告の弁に対しても、掲示板の様態に照らして、個別の書き込みを独立の著作物とするのが適当という判断がされた。
著作権法112条1項の適用は、物権的な著作権について、物権的請求権を定めたものと解釈し、その請求の相手は、実際に侵害を行っている主体か、行うおそれがある者に限られるべきとした。教唆、幇助などをしているだけの相手に対する差止請求は認められるべきではない。(この部分、不法行為、特許法、商標法への言及もあり)
プロバイダ責任制限法の文脈で考えても、メールによる削除の請求が詳細な情報(侵害の特定、権利者と請求者との関係、など)を欠いていたことなどから、削除依頼板にいくようにとの返答をしただけで削除をしなかったことも、過失にはあたらないとする。
その他: 損害賠償請求が却下されたのはともかくとしても、どうして公衆送信差止めの措置も却下されたのかはよくわからない。
不正競争
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