ウィキメディア財団 年次計画/2022-2023/公平性
知識の公義を守る
運動統治と運動憲章によって意思決定に確保する公平さを強化。運動に力を与えて関与し、地域戦略をサポートし、知識の格差解消を助けます。
意思決定に公平さを確保:運動憲章、評議会、ハブ
2030年の戦略的方向性を達成する上で運動の最重要目標の1つは公平性です。成功には、権力と特権の構造が取り残した知識とコミュニティに焦点を当てる必要があると深く信じています。世界のフリーな知識のエコシステムに不可欠なインフラとして私たちが機能には、世界中の人々が協力して、すべての人にとって価値のある情報リソースを集めて配布することが欠かせません。私たちの理想の達成には意識を高め、人々との信頼を築いて公平性の格差を埋める必要もあります。
運動戦略は説明責任の分かち合いや、公平な機会を確保して意思決定とリソース配分に参加することにより、すべての運動利害関係者に権限を与え、代表し、 自身に影響を与える決定がすべて正当であると保証する機構の存在を認識します。
財団が年次計画を運動戦略に定着させた2年目、最高経営責任者(CEO)の役職において従来より運動戦略の実施を集中的に調整し、特に運動憲章の成功を支えることに重点を置いています。同憲章の最終的な目的とは、ハブやグローバル評議会など新しい共同の構造を通じて、役割や責任分担、公平な意思決定をより明確にすることです。この文書に確固たる証拠の基盤を備えることが不可欠であると信じる私たちは運動憲章起草委員会(MCDC)と協力し、情報とデータに加え、財団から運動のさまざまな役割の集中化と分散化に関する経験も共有することを約束します。憲章を作成する同委員会はこれにより、利害関係者間の信頼と調整を強化し、集団としての私たちの目標に与える影響を可能な限り大きくする役目を負いやすくなると信じています。
この作業は進行中であり、私たちは引き続きハブの試験運用をサポートし、これらの試験運用から得た学びを文書に記録します。 財団は、これらの構造を調査する有機的な取り組みを妨げたり、運動憲章でハブの記録および定義を進めるMCDCの役割を先取りするつもりはありません。私たちの目標はむしろ、公平な機会を確保してコミュニティにそのような探索に参加してもらい、将来のアプローチを検討する運動の主催者がこれらのパイロットで何がうまく機能し何がしていないか理解できるようにすることです。
知識の公義:地域・テーマ別アプローチの共創
ウィキメディア財団は2022年、活動の一部を 8つの地域で組織化しました。これは補完性と 文脈化の原則に従い、地域社会のエンパワーメントの実現を目指します。今年はこれまでの学びを基に、組織全体の地域化戦略を策定します。
地域的なアプローチをする私たちは、歴史的に疎外されてきた視点を中心に持ってきて、よりローカルなニーズを支え、構造的な不平等に対抗し、私たちの運動における知識と人々の公平な代表を確保できます。運動戦略は私たちに呼びかけ、権力と特権の構造によって取り残されてきたコミュニティの優先を求めます。世界のすべての地域で活動を続ける私たちは、成熟した提携団体でグローバルな運動の強化に積極的に取り組むところをサポートしながら、私たちの運動で過小評価されてきた地域に特別な注意を払います。これらの地域を対象とした助成金を戦略的に拡大し続け、これらの地理にある地域およびグローバルなチームの職員を優先します。
地域の目標
私たちの運動との相互学習、共同計画の立案に取り組む私たちは、8地域それぞれの戦略的優先事項を以下のように特定し、運動の提携団体やパートナーと年間を通じて協力して計画、学習、適応を進めていきます。
サハラ以南アフリカ:サハラ以南アフリカはウィキメディア運動の中で最も成長が著しい地域の1つであり、近年、この地域に寄せる助成金は大幅に増加しています。今年はこの地域の助成金を手厚くし、ややペースを落としながらも歴史的に資金不足の地域に資金をシフトする流れを続けます。迅速助成金受給者を一般支援基金に移す点は今年も主な焦点として継続、持続可能性と長期計画の適用を伸ばします。この地域のウィキメディアのプロジェクト群はプログラムの発展に課題があり、主にアフリカの編集者の定着率を抑える要因として、オンウィキの方針(例えばウィキペディアの特筆性の方針)とならんで技術的な課題(例:IPブロック)の両方の障壁があります。財団は今年、編集者の維持という課題にコミュニティと共同で取り組み、協力して社会および技術の面で介入しようと提案しています。最後にプログラムの過去数年の成功に立脚し、この地域のアフリカ図書館情報協会(AfLIA)やアフリカ連合など戦略パートナーと運動の関与を拡大していきます。
南アジア:2022年、南アジアのコミュニティとウィキメディア財団は、最近の数年にわたる新型コロナウィルスの世界的流行(COVID)、さらにコミュニティへの資金の直接提供を妨げる法的障壁が原因で財団の関与が減少して断絶が深まっており、この地域の中心的なニーズはコミュニティの構築と(ウィキメディア運動との)再接続であると特定しました。2023年4月、ほぼ7年ぶりに開催されたウィキカンファレンス・インド(WCI)は、この地域の転換点となります。今年はそのWCIの勢いに乗って南アジアのコミュニティと協力し − リソースの提供、パートナー関係、広報連絡、調整を通じて − ローカルや地域の集まりを主催し(例:ウィキウィメン・キャンプ※ など)、地域内の結合の仕組みを構築し続けてコミュニティを活性化します。また戦略パートナーと協力して、この地域にある資金調達へのアクセスの障壁を解き放ち、その成果として助成事業を大幅に拡大できると期待しています。プログラムの面では文化と遺産の保護に関するコミュニティを対象にウィキメディア・コモンズとウィキソースで引き続きサポートし、また、この成長するローカルのコンテンツをさらに露出するには、ウィキメディアのコンテンツを再利用するサードパーティ(Jio 他)との提携増進に重点を置きます。(※=WikiWomen Camp)
ヨーロッパ中部と東部、中央アジア(CEE):今年の重点は、2年目の試験運用を続けるCEEハブのサポートとします。地域と運動憲章起草委員会(MCDC)と協力してハブ構造に対する財団の役割と責任を引き続き定義するとともに、この機会を活用して作業から得ていく学びを共同で文書化します。試験運用のハブには運営資金の提供に加えて、速度はl昨年度より遅くても地域に支給する助成金を増やし、また地域の提携組織と共有の学習空間に参加を続けます。「教育」と「GLAM※」は提携団体のプログラム面では引き続きトップの座を占め、特に勢いが見られるのは図書館分野です。財団は図書館プログラム管理者を新規に採用し(2023年1月)、この地域では能力開発にあわせて不定期開催のプログラムの支援を介して、地域サポートに投資します。(GLAM:学術機関=Gallery, Library, Archive, Museum)
ラテンアメリカおよびカリブ海地域:この地域の一連の提携団体は地域協力を意図して模索した組織の第1陣であり、その契機はイベロコープ・ネットワーク創設の2010年 (Iberocoop)でした。それから13年を経たイベロ・カンファレンス2023開催後、この地域の将来をめぐる重要な議論を行っています。財団はこの地域の「教育と文化と遺産」を引き続き支え、モンテビデオ開催の2023年GLAMカンファレンスの支援が含まれます(ウルグアイ、2023年11月)。提携団体を対象とする助成金事業立ち上げの支援は昨年よりも規模を増やす見込みで、ペースが鈍化する理由とは複数年助成金への移行という戦略計画をいだく提携団体のサポートを続けるからです。プログラム面では提携団体と協力して基幹組織という財団の役割を探り、またウィキメディア・コロンビア協会や同ウルグアイ利用者グループ(ウィキメディスタ・デ・ウルグアイ)などパートナー関係で直接の支援を頼まれた団体と緊密に連携していく中で、テーマ別空間における私たちの役割と責任を定義します。一例として地域の特定の提携団体と教育官庁との協働から、教室で読むウィキペディアという教材のトレーナー研修事業の新訂版作りを模索し、また(継続中の米州開発銀行との提携事業として)助言者を務める「気候変動と市民権」課程は、「訴求する主題※」と位置付けた気候と持続可能性に関する地域の能力構築を支援します。(※=Topics for Impact)
中東と北アフリカ(MENA):MENA地域は近年、特に困難な技術および政策の課題に直面しており、特定の個人または地域の編集活動を制限するIPブロック、財団助成金の受け取りを困難にする政府の規制、さらに小規模なコア・グループだけでなく、この地域のウィキメディアンにもっと参加してもらう難しさなどです。2022年ウィキアラビア・カンファレンスの成果を元に、財団は今年も助成金事業を続けて地域の提携組織を支援し、その規模は昨年よりも成長するが伸び率はやや控えめですが、戦略的パートナーシップ(例えばイラク以外の大学へ拡大した国境なき発想プロジェクト※の評価)ならびに地域の「教育と文化と歴史遺産」の優先事項関連のプログラムをサポートします。(※=Beyond Borders project)
東アジア、東南アジアならびに太平洋地域(ESEAP):2023年は当ESEAP地域にとって重要な年となり、ウィキメディア・オーストラリア協会主催の2022年ESEAPカンファレンスが元となり、シンガポールで史上初の地域単位のウィキマニア開催を準備中です。これは地域の認識では、ESEAPというハブが成り立つかどうか、戦略と計画および活動のプロトタイプを作成する場としています。財団はこれらの取り組みへの支援に加えて助成金を少し増額、引き続きこの地域の成長を支援していきます。プログラム面では、コミュニティ主導のプログラムとパートナー関係を通じて(例:ウィキは古文書が好き※)、引き続き地域の目標である教育と文化・歴史遺産の保護をサポートします(※=Wikisource Loves Manuscripts)。この地域の多くの国で厳しくなってきた法規や政策上の制限を考慮し、財団は率先してプロジェクトに関わる法的・政治的課題に備えるとともに、ローカルのコミュニティと協力して自在に活動できるようにします。
ヨーロッパ北部と西部(NWE):振り返るとウィキメディア運動においてこの地域はこれまで − またこれからも − 非常に大きな役割を果たしており、投稿者の30パーセント超はこの地域出身です。この地域の規模と組織の成熟度に裏打ちされ、2022年にウィキメディア・ヨーロッパ協会を設立すると、同地域の提携団体を組織したネットワークという趣旨のもとで主に政策と法規をめぐる議論にヨーロッパ広域の関与を促しています。この分野におけて、財団は2023−2024年次も引き続きヨーロッパの優先事項を支援し、あわせて今期も地域の提携団体と協力してウィキメディア・ノルウェー協会の言語多様性ハブを含めた既存の試験運用ハブに関与し、この地域における試験運用ハブに対応する財団の役割と責任を定義していきます。資金調達の観点から眺めた場合、この地域では昨年、小規模な加盟組織から資金の需要が増し、特にジェンダー格差の解消に重点が置かれました。今年も前年までと同様に、財団は引き続き地域の提携団体への資金提供を増やしつつ、運動戦略のガイダンスに従って伝統的に過小評価されてきた地域をを優先して資金増額の幅を広げます。資金調達の技能と能力の開発に関心のある提携団体には、リソースを提供します。
北アメリカ(アメリカ合衆国とカナダ): アメリカ合衆国/カナダ地域がホストするウィキメディア組織は信じられないほど幅広く、コミュニティ単位のプロジェクトからパートナー関係まであり、それでいて、この広大な地域全体をどう調整するか、また能力格差という課題にも苦しんでいます。財団は今年も引き続き、コミュニティ主導の研究と会話に従事し、この地域の役に立ち、さらに持続可能な協働モデルが作れないか可能性を探っており、またこれまで数年をかけて主要な機関と協働した作業群を受け継ぎ、大規模で技術的に高度なGLAMパートナーであるスミソニアン協会やメトロポリタン美術館などに助言を続けていきます。特筆するならアメリカ・デジタル公共図書館(DPLA)へのサポートを優先、先方は一方で何千もの文化機関のためにウィキメディア・コモンズへの大規模な投稿パイプラインを開発し、他方で ウィキメディア・ワーキング・グループを組織して図書館と公文書館を対象に、ウィキメディアの実践強化を促しています。当地域の助成金は、他の古参のコミュニティと同様に昨年よりも増額し伸び率は下げ、ウィキ教育財団※やアート・アンド・フェミニズム(Art+Feminism)など、戦略的な複数年助成金のパートナー組織への投資を続けます。(※=ウィキ教育財団)
テーマ別目標
地域化されたアプローチの開発を続ける一方で、財団は利害関係者間で調整し、グローバルな組織テーマ3件をめぐる意思決定に公正さを確保します。教育、文化と歴史遺産、ジェンダー。これら運動のアウトリーチの空間はこれまで、新しい投稿者やパートナーとの架け橋となり、重要な知識の格差に言及し、ウィキメディアの評判とブランドを向上させてきました。ところが、あまりにも長い間、グローバルな調整を欠いた技術とインフラの格差が長く続き、さらに研修と技能開発の必要性に応じないまま戦略の可能性は足踏みをしてきました。これらの課題はジェンダー単位で組織する空間で特に目立ち、運動のあちこちで何年にもわたって続いてきたのです。教育、文化と歴史遺産、ジェンダーの分野で運動の活動を強化しようと、今年、指標を共有してテーマごとに話し合い、能力開発と社会および技術支援をより良く調整して、これらの基盤となるテーマに対して、さらに一貫したバックボーンのサポート開発に取り掛かります。
教育
今年は主要な提携団体ならびにウィキ教育の広範なネットワークを支え、ウィキメディアと教育の2030年の理想を中心に団結し、コミュニティ主導の研究と実験に協力して、次の情報を提供します。
- 教育に役立つ共通の運動アジェンダと、影響を測定する共有システム
- 新しい協働モデルを計画し、運動全体の規模で相互に補完する活動をサポートする
- 財団のバックボーンをサポートする明確な役割(次に訪れる運動憲章を見越して)
私たちは同時に、財団が始めた「ウィキペディアを授業で読む」プログラムをどうすればもっと地域化したり主導をコミュニティに移したりできるか取り組み、提携団体とともにやや負担の少ない研修のアプローチを試してみて、ウィキメディア運動の広範な議題にてらした同プログラムの評価を進めます。また教育ウィキのアウトリーチ協力者(EWOC※)を取り巻く人的ネットワークを運動内の他のサポート空間と統合する方法を検討し、引き続きサポートします。(※=EduWiki Outreach Collaborators)
文化と歴史遺産
今年は引き続き、このネットワークにとって非常に重要なウィキメディア・コモンズとウィキソースに焦点を当て、視覚素材にみられる知識の格差を埋め、地方語や先住民族言語で記した情報源の多様化を目指して、博物館や公文書館との戦略的な提携を築くことにします。
- 昨年はオープンリファインを支援してウィキメディア・コモンズに構造化データを添えて投稿する大量アップロードサービスを開発し、大規模機関のニーズを満たそうと考えました(OpenRefine)。今年は投稿のもっと簡略な体験を求めるコミュニティの声に応えて写真家や小規模機関を対象に、フリッカー財団と提携事業を行い、統合型のアップロード経験をまとめます。
- コモンズに投稿するとはどういうことか、私たちのコミュニティと提携先に理解してもらい、影響を証明できるようにするには、GLAM機関にとって重要な指標は運動の全域で調整して定義し、製品チームと共同で配布を開始します。
- ESEAP、南アジア、アフリカのコミュニティから関心が寄せられていることから、私たちは「ウィキソースは古文書が好き※」イニシアチブを呼びかける範囲を広げて、学びのパートナーのうち共通の特徴がある集団に開放し、サポート提供には助成金プログラムや技術提携関係先および関連資料の収蔵機関へのリンクを活用します。(※=Wikisource Loves Manuscripts)
- テーマ別の利用者グループのサポートを改善し、文化と歴史遺産のネットワークを強化します。国際博物館会議は3年に一度の会議開催を予定しています。博物館や美術館の職員同士のコミュニティは、グローバルな規模で5年ぶりの集まり「グラムウィキ:文化、歴史遺産とウィキメディア・カンファレンス」に一堂に会します。(GLAM Wiki: The Culture, Heritage and Wikimedia Conference )
図書館と運動の関わりは、上記よりも段階が発展しています。私たちは引き続き主要なパートナー機関や利用者グループと協力して図書館事業を評価し、最も勢いのあるサブサハラ以南アフリカやラテンアメリカ、ヨーロッパ中部と東部地域(CEE)で持続可能なサポート計画を策定します。また2024年に開催予定の次のグローバルな「ウィキメディア + 図書館コンベンション」を積極的にサポートします。(Wikimedia + Libraries)
ジェンダー
今年、財団は運動全体のジェンダー主催者に共通の議題を共同で作成し、対象を絞った能力開発と技術サポートを求めて、同盟者と寄稿者同士の調整改善を優先します。運動関係者および財団職員とかわした初回の協議に続いて、次のようなジェンダー格差を埋めたいという願望があります。
- 空間を厳選して、より頻繁に集まるよう促すことを手始めに、作業や戦略に協働で取り組み優先事項を共有する。(ジェンダー格差の年次会議、年間を通して地域全体で取り組む積極的なジェンダーキャンペーンなど)
- 確立されたジェンダー主催者向けに技術サポートを強化、対象にはリスト作成の一元化や、メッセージ受発信を効率化して関心のある寄稿者に連絡する支援が含まれます。
- ジェンダーがより平等で包摂性があり安全な空間として、女性の伝記と 女性が読みたい資料が交差したコンテンツを提供する空間で、拡張権限を預かる投稿者と編集者がジェンダー平等の規範と慣行をボランティア体験に組み込むための、円滑なプロセスの必要性を含みます。
私たちは今年、特定された優先事項に対して、これらの洞察に基づいた社会および技術両面の解決策を介し、投稿者にとってジェンダー格差の解消がもっと迅速な体験になる方法を探ります。私たちは、運動の演者と一緒に研究し学び、自分たちの活動を積極的に支援する財団に対してどのように思い描いているかをマッピングし、最終的に私たちの共通の優先事項を捉えてジェンダー格差を埋める戦略を共同で作成します。
公平性基金
ウィキメディア財団は、2020年設立の公平性基金を引き続き支援します。同基金の監督委員会は昨年、コミュニティのボランティアを追加して拡充し、コミュニティから助成金の推薦を公募しました。特に知識と人種の平等という目標を前進させるために設けたものです。これらの問題に取り組む人々が私たちの運動に貢献するために、追加の道筋と協力の機会を作る必要があることを認識しています。タイズ(Tides)は説明責任を簡素化して明確化し、このイニシアチブ助成金の保留分をウィキメディア財団に還元しました。この資金を使い切るまで、今後の助成金申請は財団が提供します。 助成金の第1ラウンドの報告書をご参照ください。
運動の関与
より大きなウィキメディア運動の一部として効果的に機能する財団の能力は、運動全体に公平なつながりを築けるかどうかにかかっています。これには運動に携わる職員全員を結集することが含まれます。来年は財団の全部門が連絡を取り合い、関与する方法に一貫性を持たせて運動との協調を強化します。
2021年、運動コミュニケーションチームは調査を実施し、ウィキメディア運動をよりよくまとめる計画の通知方法を探りました。洞察には、もっと良い入り口を正面に作る、人間を使う、人間と話す、「ブロードキャスト」と「オンデマンド」のバランスをとる、受発信の前に調整、明確にし、接続し、反映する、次のように勧告も含まれていました。今年はこれらの勧告を引き続き実施し、財団全域の点と点を結びつけて、関与とコミュニケーションの方法を意図的に包括します。これらの作業のほとんどは財団の包括的な目標であり、インフラ、安全と包摂性および効率化に関わり、舞台裏で行われます。
地域のつながり:多文化、多言語の意思疎通(コミュニケーション)を深め、ローカルの知識に裏付けされた双方向の会話を構築します。 地域ごとに専門家がおられ、ローカルの社会と協力して共通の理解を育むには、個人的な人脈作りとその維持を頼りにする部分があります。その人々には今後とも地域社会から話を汲み上げて声を増幅し、地元や地域単位の集まりを呼びかけて促したり、地域から上がる支援の求めに耳を傾けて方策に結びつけたり、財団が呼びかける発信と広報連絡の内容を、ローカルの文脈で伝播するよう期待されます。ローカルをグローバルに接続しようとする私たちにとって、最重要点とは左記を目指して地域単位のコミュニティの構造とつながるように取り組むことです。
玄関をもっと適切に:メタ空間で存在感を高めるには、財団から提供できる情報や支援、リソースに行き着く「玄関をもっと適切に」しようと取り組みます。世界中の運動参加者から私たちが連絡を受けたり、私たちと提携しようと働きかけがあったときに備え、ユーザー体験を改善して迎えるよう目指します。またウィキメディア運動の公式ブログを「Diff」と呼び、今後も訴求力を維持するよう努めます(ディフ日本語版)。現状で購読者はほぼ1千人、新規に公開するブログ記事は1日平均1.5件強、読者のトラフィックは増加しており、運動のさらに広い範囲にディフが訴求すると見ています。
ウィキマニア、年間ウィキメディアン賞などを通じて、もっとつながり互いを祝いあう:調査によると、私たちの運動参加者は各プロジェクトとイニシアチブと運動戦略のつながりを描いたストーリー、ローカルな活動をグローバルな運動に結び付けるものを求めているとわかりました。そして縁の下の力持ちをぜひ称賛したいし、自分はウィキメディア運動の一員だという帰属意識を高めて、自分という個人がつながっている感覚を強めたい、コミュニティを振り返るストーリーが求められています。
ウィキマニア2023は多様性と協働、未来をテーマにしており、ウィキメディアのボランティアや国・地域別の協会および利用者グループがコラボする機会として、東アジア・東南アジア・大洋州地域(略称ESEAP=イージアプ)の協調が期待されます。表彰制度「年間ウィキメディアン賞」は一個人を祝うだけではなく複数のウィキメディアンを讃える方向へと旅は続きます。運動から生まれた作品や作業を讃える方法はバーンスターからストーリーテリングまでありますし、もっと方法がないかと探していきます。この作業は、すべての貢献は重要という視点で進めます。
技能とリーダーシップ開発への投資:
財団コミュニティ開発チームは引き続き、以下のようにウィキメディア運動の技能とリーダーシップ開発にも投資します。
- スキル開発:ウィキ学習プラットフォームの拡充(WikiLearn)には以下の各点が含まれます。カリキュラムの新任開発者および新人トレーナーが使えるように「自分用のカリキュラム設計」ツールセット(スーツ)づくりの内容はテンプレートと研修方法とリソースの立ち上げ。ウィキ学習の空間で提携団体のキャンパスが共同出版。組織統治の構造と管理者(不正使用防止)研修の実施。レッツコネクトを舞台に相互学習を継続してサポートします。(Let's Connect)
- リーダーシップの開発: 過去数年分のボランティアとの取り組みに立脚してウィキメディア運動における効果的なリーダー像を定義し、ボランティアが自分自身でリーダーとしての役割や能力や抱負を決めることができるように支援します。
具体的にはウィキメディア運動のリーダーシップ開発計画の指針に従って提携団体と 提携団体委員会(AffCom)のつながりを支援しながら、技能の自己評価、協議の進行ガイド、ウィキ学習モジュールに加え、視覚的な図表示を扱います。 私たちの目標は、ボランティアの皆さんにリーダーシップ開発の参加機会を開き、能力を伸ばして有効な指導者になってもらうことです。 その実践には専用の助成金の支給により(リーダーシップ開発成長助成金)、リソースの構築や、リーダーとしての成長を奨励します(学習セッションの主催、リソースの翻訳、研修課程の作成など)。また、リーダーシップ開発の学習経路を設計して実装します。