The Wikipedia Library/1Lib1Ref/事例研究
図書館員のための#1Lib1Refを使った人材開発:ウィキメディア・コートジボワールの事例
2017年にウィキメディア・コートジボワール協会が#1Lib1Ref※キャンペーンに参加したとき、参加した図書館員はたった7人でした。翌年は50人が参加、いくつかの将来性のありそうな提携関係が生まれました。人材開発プログラムとしての#1Lib1ref導入は、参加を促進する重要な戦術の1つでした。(※=ワンリブ・ワンレフ、図書館員が毎日、出典を1人1件ずつ加筆する呼びかけ。)
段取り
- コートジボワールでは人材開発に重点を置いた場合、図書館員はすぐにイベントに参加できると確認しました。そこで、このときのキャンペーンを重要な学びの機会として捉え、デジタルリテラシーのスキルを磨き、共同作業の新技術を習得し、自分の図書館が備えた情報源をより幅広い利用者に提供する方法などを伝授しました。
- 1件以上出典を追加できた参加者に証明書を発行。
成功の鍵
- ウィキメディア・コートジボワールでは事前の議論を通じて、現地の図書館員が自分たちの能力開発に役立ちそうな研修その他の学習活動に、強い関心を抱いていると知りました。したがってそれを使い、彼らの関心を引くことになりました。
- 参加証を発行することにより、ウィキペディア図書館の行事の参加と、新しい技能を修得したことが証明できます。
- 図書館関係のネットワークは職場の同僚や、他の図書館員の紹介が鍵となっていたので、1年目にはこれを利用して私たちのプログラムをほんの数名に紹介したところ、1年後には約50人が集まりました。
得られた教訓
図書館員は直接、自分の周囲の同僚や学生、他の教職員に影響を与えるため、ウィキペディアにとって最良の仲立ちになります。繊細なアプローチで意図的に価値を高める機会を取り入れていくと、ウィキペディアが学界で積極的に受容されることに結びつくと考えられます。
外部のオープンソース引用ストレージツールを利用:ヨーク大学の事例
ヨーク大学では過去2年間、#1lib1ref キャンペーンが行われました。初年度に集められた図書館員やアーキビストは、それまでウィキペディアを編集したことがない人がほとんどでした。全員、ウィキペディアについて学ぶのを楽しんだものの、Citation Huntを使うと記事が脈絡もなく提示されるため、専門外の分野の記事に必要な参考文献を検討したり所在を確かめる作業はやりにくく、ストレスを感じる場面が多かったようです。例えば人文学の司書が化合物に関する記事に参考文献を追加しようとしても、どの情報源が最良か決定する難しさに何度も出遭いました。解決策としては、参加者の知識と興味に一致する記事が見つかるまでスキップし続けるしかありませんでした。しかし編集に時間の制約があったせいで、ウィキペディアにもっと多く貢献するには、時間をもっと効果的に使うことができたかもしれません。2年目には、ウィキペディアに参考文献を追加するために異なるアプローチを採用しました。この戦略により、図書館がかかえるその他のニーズを満たすという副次的な利点もありました。
段取り
- 新しいアプローチでは、ヨーク大学の先住民の教員と卒業生に焦点を合わせることにしました。教員にはあらかじめその戦略を伝え、対応する機会を与えました。主催者はイベント当日の数週間前に、ウィキペディアの注目分野に既存の伝記記事のリストをまとめると、アウトリーチ・ダッシュボードに置きました。参加者は事前に登録するように勧められ、必要に応じて利用者名を取得するプロセスの説明も受けました。
- 参加者の作業を大幅に簡単にしようと、主催者はイベントの主題の参考文献となる出版物を体系的に検索し、結果をZotero(オープンソースの出典管理・保管プラットフォーム)に追加しました。#1lib1refへのZoteroの採用は、2017年のキャンペーン中にMita Williams(@copystar)のツイートからヒントを得ています。このアプローチにより、図書館に教職員の出版物が蔵書されていないことが認識されたのは想定外の収穫でした。先住民の教員が求める出版物の分野についても、理解を深めることができました。
- イベントではウィキペディアの編集方法やいくつかのルールと編集の習慣を紹介し、#1lib1refキャンペーン関連の情報およびウィキペディアにZoteroを組み合わせる方法のプレゼンテーションも行われました。そのプロセスに関する詳細な情報は https://en.wikipedia.org/wiki/Wikipedia:Citing_sources_with_Zotero を参照してください。Zoteroは図書館で推奨される出典ツールの1つなので、ほとんどの参加者はイベント前に使った経験があったため、編集セッションでは与えられた記事と参考文献一覧からウィキペディアの記事に追加する情報を増やすことができました。
成功の鍵
- イベント前にコンテンツを整理することで、参加者と主催者双方の利便性が高まり、ストレスが減少しました。
- 図書館員の世界で普及しているツールを選択すると、編集に習熟しやすいばかりか、ウィキペディアに関する知識も身近になりました。
- 編集そのものに十分な時間をかけることができたため、キャンペーンの目標が達成されました。
- このアプローチは図書館員にとって作業がやりやすく便利で、インターネット上におけるいくつもの議論を励起し、先住民の研究者の存在感と表現方法、さらにコンテンツの格差を埋める上でウィキペディアとウィキデータへの出典の追加がどれほど重要な役割を果たすか話し合われました。
- 編集の作業時間が増えたことで他の作業を試すことにつながり、ウィキデータへの出典追加など、参考資料を追加する層が厚くなりました。
得られた教訓
初年度よりも多くのことが達成されたように、イベント前の事業モデルはさらに効率的でした。新しく訓練された図書館員にとって使いやすさが親しみを呼び、もっと使いつづけようという意欲を生み出します。この新しいアプローチはウィキペディアの情報強化に役立ったばかりか、ヨーク大学関係者の存在感にも大きな違いをもたらし、社会にインパクトを与え意義のある目的をつかむ感覚を育てました。
図書館員より図書館を優先:グントゥールのカカティヤ大学とアンナマヤ図書館の事例
2018年5月のキャンペーン中、インドでは別々の2箇所で#1Lib1Refセッションが2つ開催されました。第1のカカティヤ大学のセッションでは、図書館員の研修に焦点が当たり、第2の機会には図書館ボランティア対象に訓練セッションが組織されました。 両方の経験について、以下に段階ごとに分析します。
段取り
カカティヤ大学
- このイベントに確実に相当数の図書館員を集めるため、イベント主催者は大学の図書館科学部門と連携しました。この戦略的パートナーシップにより、#1lib1ref研修に参加した図書館員は15名でした。また、大学とつながるメディア関係者はいくらでもいるので、このコラボレーションの形態はメディア報道の確保にも不可欠です。参加者はトレーニングにより、参考文献の追加法とキャンペーンの本質を学び、足りない出典の追加により、信頼性を向上させることを修得しました。
グントゥールのアンナマヤ図書館
- このセッションには大学の司書が1人いましたが、主な参加者は学生と教員数人でした。 進行役を2人雇い、堅苦しくない集まりだったので手続きや手順が少なく、物事はすみやかに始まりました。参加者を2つのグループに分け、進行役を1人ずつ割り当てました。当初、Citation Hunt ツールに基づいてトレーニングのモードを設定したものの、参加者の興味をひくトピックがなかなか見つからなかったため、使用した図書館に確実にある情報源もしくはソースをもとに、トピックを見つけるほかありませんでした。図書館の蔵書を活用したことは便利だったし実際的でした。
成功の鍵
カカティヤ大学
- 大学の学部とのコラボレーションを確保し、ターゲットの閲読者に会うことができました。
- キャンペーンを報道するメディアを着実に確保するため、このアプローチは役に立ちました。
- コラボレーションにより、必要な人数の参加者を集めることができました。
- このイベントでは世界最大の百科事典の改善において、図書館員がいかに重要な役割を果たすかを紹介し、一部の参加者には楽しんでもらえたようでした。
グントゥールのアンナマヤ図書館
- 図書館の雰囲気により、気分的に参考文献を追加しやすくなりました。
- 編集ワークショップですぐに使用できるリソースが揃っていました。
- 非常にやる気がある参加者ばかりで達成したことも多く、高い定着率でした。
- 機関とは公式の協力や提携を結ばなかったため、お役所主義や手続きは少なくなりました。
- 時間を効率的に使った点が、紹介や懇親、終了スピーチに多くの時間が費やされた初回とは異なりました。
得られた教訓
カカティヤ大学
パートナー関係は役に立つものですが、それ自体には限界があります。参加者は、所属部署の要請により参加する義務があると感じたか、または証明書が授与されて後で従業員評価に使われるかもしれないから、来ていただけです。しかし図書館員の反応から、人材開発もしくはキャリアアップの機会として提示することが、図書館員対象のキャンペーンにどれほど重要か確認できました。
グントゥールのアンナマヤ図書館
- やる気がある人なら、誰でも#1lib1refイベントに参加できます。キャンペーンを見聞きする人の層を広げて、ボランティアを始め、興味を持った人をすべて取り込むようにするべきです。特に、イベントの内容をあらかじめ決めたり、選択したトピックや記事の文に対する参考文献に役立つリソースが蔵書にあると確信した場合は、図書館は1lib1refイベント開催に適した場所です。
- #1lib1refイベントに、どんな相対的影響を派生させたいか決めます。メディアの牽引力と図書館員への認識に焦点を当てているのであれば、おそらく教育機関や図書館との正式なパートナーシップが不可欠でしょう。
これらのイベント詳細はベント記録を参照してください。