ウィキメディア財団最高経営責任者/更新/2024年2月更新

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皆さん、こんにちは。

ウィキメディア財団に着任以来、このページその他で皆さんに定期的に発信してきましたが、前回の通信以降の情報をいくつか更新したいと思います。 2023年10月の振り返りでは、毎週のように戦争や紛争、気候変動の激化を見せつけられて、世界中が不安定になり不確実さが高まっているという思いが強まり、世界のあちこちで複雑な課題の時期に入ったと感じました。今ではそれらはますます真に迫っています。あの当時、お互いに話す時間をもっと作って、もっと仲を縮めてほしいと頼もうと私は直感したのでした。今現在、これはさらに求められていると感じています。

ボランティアの皆さんの中に、対面型の集まりを再開することがとても重要な集団がいると私が気づいたのは、同じ部屋で人脈をもう一度固め、やる気を充電し直したり、困難な問題が出てきても一緒に解決に取り組む空間を提供することを指摘するのだと思います。財団の幹部もまた、組織内のニュース共有や個別に会話したりするため、オンウィキその他のデジタル・フォーラムに出てしっかり取り組んできました。適切な情報を適切なタイミングで適切な方法で伝えよう、すべての人の期待に応えるなんて決して無理なのは承知だけれど、もっと意図的に、もっと努力しようと目指してきました。

中でも最も重要なのは、年間を通して – 公式にも非公式にも – お互いに会話を続けること。これを話し合い:2024という取り組みへの参加を広く呼びかける基礎として、皆さんが今、何を考えているか熱心に耳を傾け、財団の進捗状況を共有したり、また複数年の年次戦略計画にどんな多方面にわたるニーズが求められるか考慮するためです。(ここで思い出してもらいたいのは、私たちの運動戦略に基づく長期計画の優先事項とは、ウィキメディアの財務モデルであり、製品・技術面のニーズを盛り込み、役割・責任の明示のために存在する点です。)

ウィキメディア財団の理事や幹部や職員は現時点で、オンウィキで個人や小グループと130 件の会話を開いてきました。こうした会話は世界のあらゆる地域に広がっています。 私たちは、コミュニティの活発な参加者から加わったばかりの初学者、技術ボランティアからスチュワード、イベント主催者から提携団体の幹事などから学びを得ることができました。これらの協議は、来週開く理事会の戦略計画合宿で審議を改善する目的があったので、これまでに聞いたフィードバックの一部をここにまとめます。

引き続き財団の製品・技術面のニーズ対応に焦点を当てること。

皆さんに宛てた2022年1月付の最初の手紙の中でも、私の見立てではウィキメディア財団の主な役割とは私たちのプロジェクトの実現であり、それがウィキメディア運動の使命にとって、あらゆる側面の中核となると理解しました。 この見立ては、過去5ヵ月にわたって私たちが催した「話し合い:2024」のほとんどの会話でますます確かなものとなり – 一端には技術インフラの更新に重点を置き続ける財団の必要性があり、別の一端にツールのメンテナンスと測定基準に関するボランティアのニーズ対応がありました。 私たちの年次計画は引き続き、財団の製品技術部門の優先事項を中心に据えています。財団では、多世代の視点からウィキメディアのプロジェクト類を理解するなら私たち全員が何をしなければならないか、慎重な会話をさらに進めています。 これは私個人にとって戦略的取り組みの最も重要なトピックであり続けるだろうし、使命を果たそうとしている私たちの努力は具体的であり同時に実践的であり、時間軸に沿った作業の永続と切っても切れません。

このメーリング・リストの最近の議論を見ていて思い出しましたが、私たちはあらゆることに満足できるほどすばやく達成できないとしても、それでも私たちは正しい方向に前進し続けているのです。 製品技術部門の最高責任者セレナ・デッケルマンは、 最近のシェアで次のように述べています。 「この数ヵ月をかけて展開した変更によりPageTriage(ページトリアージ)のバックボーンを改善可能にしたこと、またボランティア開発者の皆さんと緊密に連携して将来の持続可能性を確実に進めました。 今後の見通しとしてさまざまな取り組みを行う予定で、そこには編集チェック議論ツールから、ダークモードアンドロイド版巡回iOS版のウォッチリスト、仲裁のAutomoderatorコミュニティ設定ウィキメディア コモンズ用アップロード・ウィザードその他のプロジェクトに至るまで含まれます。 Phabricator では、この6ヵ月にボランティアから報告された600件超の問題を解決、またボランティアから直接プロトタイプを募るという調査方法を用いて情報を提供、タイポグラフィー(文字組み)に関する意思決定のために使っています。 さらに学びとしては、フォントのサイズと間隔の基本だけでなく、ウィキペディアの使用に関する文脈やデバイスや文化の側面についても重要な情報を得ています。これらは人々がソフトウェアにどうアクセスしてどう使うか変化している状況において、ソフトウェアをますます使いやすくするために不可欠です。(そして現実に20年間で大きく変わっていますから!)」 デッケルマンはまた、製品チームと技術チーム向けにすでに目標の草案を公表していますので、皆さんのご意見やオンウィキのコメントをいつでもお待ちしています

〈人間主体、技術導入〉ということは、今からも人間がリードするという意味。

これらの会話のほとんどで技術面ばかり取り上げる点が目立ちますが、ウィキメディアが人間主導の運動であることに疑いの余地はありません(「すべては人間に関するもの。」)。 これはよくあるジレンマとして、既存の編集者のニーズと初学者を迎え入れる取り組みをどうバランスさせるかという点への対処、さらに、そのために多くのソリューション模索につながりました(「それは常に〈既存のコンテンツを保護する必要性〉と〈新しい利用者に気を配りつつエラーを許容できるかどうか〉の間のせめぎ合いです。」)。 一方で自分たちの辿ってきた道のりから素晴らしい逸話をシェアする人もいたのですが(「新規利用者ツールは本当に素晴らしいプロジェクトだし、そこにエネルギーが注がれるのは見ているだけでとてもうれしい」)、他方では、プロジェクト類がこの先の何世代にもわたって持続可能なのかどうか、切迫した声があがりました(「プロジェクトに役立つ可能性のある人々たちが来ても追い返してしまっている。」)。 いくつかの議論では上記の点に関して「ゲームチェンジャー」としてのユニバーサル行動規範の価値に着目し、すべてのコミュニティは実際に無償の知識の使命に安全に貢献する場に招待されている点と、コミュニティにはまだ実現できていないことがあると認識してもらう点、それらを伝えようとしました(「たぶん良いことなんだろうが、私が直面している問題の解決に使えるかどうか分からない。」)。 初回の聴き取りツアーで得た学びとは、すべての貢献に価値があると認める必要性、さらに、あらゆる貢献者は自分が歓迎されていると感じるべきだという点でした。 「話し合い:2024」で交わした話から私自身の理解が深まったとすると、それはコミュニティに積極的に参加してボランティアの皆さんが成長する上で、相互扶助と指導役(ピアサポートとメンターシップ)が求められている点です。(一例として、上記以外の編集者140名が参加した振り返りがあります)。

最後に、次世代の人工知能の形成におけるウィキメディアの役割については、いくつかの会話の中で私たちの人間主導の価値観を取り上げており、これは現在も世界で私たちのコミュニティで、財団でも議論が続く主題です。これを補完するように、さまざまなプロジェクト単位のコミュニティ群ではプラットフォーム上の AI 生成コンテンツの役割をめぐり、継続して議論されています。 AI に関する共有研究の課題に貢献しようと目指す最近の取り組みがあり – ナレッジ・コモンズに貢献したくなる人間の動機を理解するには調査研究がもっと必要という指摘も含め – 公開で活動する小グループが作成したもので、より多くのインプットから利益を得るため、あえて〈質の粗い初稿〉を急いで発表したものだそうです。

財務モデルにもっと確実性をもたせて、難しくても妥協を促せないのか?

前回の発信では、将来の予測ではさまざまな理由により、オンラインやバナーを通じた募金活動が例年と同じペースでは増え続けない可能性がある点を共有しました。このリスクを軽減し収益源を多様化するため、私たちはウィキメディア信託基金ウィキメディア事業体など、複数の長期的な取り組みを進めています。("※"=Wikimedia Endowment、Wikimedia Enterprise。) 過去2年には、一方で財団自体の成長率を鈍化させ、他方で運動の他の実態を支援する財源増加を実施してきました。 話し合い:2024の対話は、運動の実態と共有する場を提供し、財政の確実性のためには財団から複数年にわたる助成金を受ける必要があると示され、これを来年の年次計画に取り込む予定です。 他の会話では、限られたリソースを引き続き優先し、妥協(トレードオフ)をもっと明確に示す必要性が強調されました。(「持っているお金は、できる限り賢く使わなければなりません」。) これらの議論に立脚し、すでに財団の現在および今後の年次計画サイクルの考え方を改善しています。

ウィキメディア運動の役割はもっと明確に定義するべき。

運動憲章を定義するという課題は、あらゆる種類の貢献者と交わした複数の会話で話題になりました。 その内容は、運動戦略の勧告事項や原則に関する考察から(「この運動では常に先着順になるのか?」)、さまざまな構成要素の目的に関する質問まで多岐にわたりました。(「グローバル評議会が決めるべきことは何か? なぜ決定権の主体があちこちに動くのか?」「単純なネジ釘なら、ハンマーを振るってでも問題を解決するはず。」) 当然のことながら、ものの見方はいろいろありました。(「提携団体やハブその他の組織統治の仕組み(ガバナンス)に関して、多くの地域の編集コミュニティでは、即効性のあるメリットを認めていません。」「コミュニティは依然として、財団には自分たちの意見を聞いてもらえないと感じている。」「提携団体の行う仕事が良いと賞賛に値するのは、特定の地域、特に提携団体がコミュニティと深く関わる地域に限定されます。」)

そして目の前にある複雑な課題を深く認識すること(「コミュニティは非常に巨大で、全員を結び付けるのは難しい。」「運動に変化をもたらすとして、どんな方法なら理解できて、人々を怖がらせないだろうか。」「コントロールとリスク管理が肝心で、一方でコミュニティに力を添えたり、あらゆる人をもれなく招き入れながら成長を試み、他方では、これまでの23年の間に細心の注意を払って構築してきたものを守っていけます。」)

憲章に費やす時間と資源に見合う取り組みにするために特定しなければならないことがあり、それは、私たちの運動の将来のニーズに対応し、私たちの周りで急速に変化する世界の期待に応えるために何が肝心なのかであり、それを戦略方向性に盛り込み、私たち全員にもっと明確に示す必要があります。最近、ウィキメディア財団と運動憲章起草委員会はこれらの質問を共有し、主な焦点と懸念事項の特定に取り掛かりました。今後の数週間や数ヵ月をめどに作成する草案の新版については引き続き査読してコメントを出していく予定です。理事会はこのプロセスと運動憲章の確立に財団が寄せる希望について、次の3月21日の理事との公開対話の中に時間を割り当てて詳しく話す予定です。

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話し合い:2024年は有益な聴き取りの始まりであり、全体として私たちの活動の実態はどうなっているか聞くために続けていきます。皆さんの声や貢献は、私たちがこれまでに受け取ったフィードバックにぜひ追加したいですし—その場がオンウィキでも、1対1や小グループの会話でも、対面した場合でも同じです。私たちはそこで学びを得るだろうし、それらは財団の今後の長期計画に役立つはずです。話し合いに参加をご検討願えませんか。

会話のたび、私個人は人々こそ、この運動を動かしているのだと思い返していました。今もなお、世界はウィキペディアとウィキメディアのプロジェクト群を必要としていて、これまで以上に極めて重要な瞬間に私たちは立ち会っています。皆さんの中のある人から言われました。「私たちが作ってきた道があるじゃないですか、世界中の人々を繋ぐコミュニティというものを経験してきたんで、きっと道は見つかると感じますよ。」

いつも申し上げているとおり、皆さんのご意見ご指摘ご質問は私のトークページに投稿されるか、直接、メールにて[$2miskander@wikimedia.org] 宛てにご連絡くださるのをお待ちしております。

草々

ウィキメディア財団最高経営責任者(CEO)マリアナ・イスカンダー(Maryana Iskander)