ウィキメディア財団年次計画/2024-2025
今年の年次計画は、世界とウィキメディア運動にとって不確実性や変動性、複雑さが増大する時期に策定しました。オンラインの信頼できる情報の役割は世界でますます重要になり、これまで以上の脅威にさらされています。組織もオンライン・プラットフォームも、ますます二極化と断片化が進み変化するインターネットに対応する必要があります。情報検索の新しい方法は、チャットベースなど注目を集めています。人工知能(AI)による機械生成コンテンツは容易に作成でき、ウィキメディアの役割にとっても機会とリスクの両方を生み出していて、人間主導の技術に対応してきた知識システムという役割にも、さらにウィキメディアの財務モデルにも波及しています。
こうした向かい風に直面している中、ウィキメディア財団の年次計画および複数年計画は引き続き運動の2030戦略的方向性に導かれています。私たちを取り巻く世界の変化により、この方向性はこれまで以上に重要になってきました。無償の知識のエコシステムに不可欠なインフラになろうという呼びかけは、単なる耳ざわりの良い声明ではなく – 周囲の状況の変化に応じて、私たちのプロジェクトと組織の持続可能性をずっと評価し続けることは、義務なのです。
ウィキメディア運動の目標は今後とも、戦略方向性の主な2本の柱でしっかりと根を張っていきます。
- 知識の公理:「人類の多様性をそっくり代表する知識を集積し、私たちの世界を進化させます。」
- サービスとしての知識:「他の人が同じことを実行できるようなサービスと構造を築くこと。」
運動に携わる私たちは、今後も信頼に足りる情報を世界に提供し続け、また320超の言語でボランティアを育成してコンテンツを作成しキュレーションを推進します。
この年次計画では財団の中核事業と並行して、多くのグループや個人がさまざまな運動戦略の勧告事項の推進をめざした取り組みの成功を祝います。財団はまた今後数年の間に、戦略的方向性2030を共同で追求する上で一部の推奨事項が他よりも有益であると、より明確に示し始めます。
その上、さらに先を見据えた計画を立てなければなりません。2030年以降を展望すると「有益な情報を作成し維持し(中略)、インターネット上で無償で永久に 入手できるように」すること。必要とする私たちの使命にとって極めて重要です。ウィキペディアのコンテンツは何十年にもわたって、一貫して Google 検索の 99% で検索結果の1ページ目に表示されます。「デジタル世界全体を結びつける事実に基づくネット構造」とさえ表現されています。
それでも、検索アーキテクチャはまだリンクベース – これまで私たちのプロジェクトと財務モデルに十分に貢献 – からチャットベース への移行の初期段階にあるものの、おそらくずっと継続する可能性があります。それは人々がオンラインで情報を作成し消費する方法が世代交代する一環であろうと考えます。インターネットの多様化とグローバル化が進み、だんだん英語中心ではなくなるにつれて、これらの変化はさらに加速していくでしょう。
戦略の逆説が浮上:ウィキメディアのプロジェクト群はインターネットの知識インフラにとってより重要 になりつつありますが、同時に、インターネット利用者からは見えにくく なってきました。ウィキペディアが前よりもっと重要 になったのは、情報検索の将来を形作る大規模な言語モデルに取り込まれ、検索に限らずそれ以上に波及しているからです。英語版ウィキペディアはチャットGPTが取り込んだ演習データの 最大の単一情報源を形作ること – 品質の重み付けは最高位の1つであることは、多くの推定が発表されています。一般論ですが、これは良いことです。信頼できる AI には、信頼に足りる事実の基盤が必要だからです。
ウィキメディアは同時に、その内容がインターネットの重要なインフラの一部として目立たなくなって きていて、原因はインターネットがますます閉鎖的になりAIの媒介に頼る傾向を強め、事実の出典に帰属を示さなかったり、ウィキペディアへのリンクバックすら省略するせいです。サードパーティによるコンテンツ使用を支えてきた社会契約には、圧力がかかってきました。AI が最終にどんな影響を及ぼすのか、いまの段階ではまだわからなくても、この圧力の影響は時間の経過とともに明らかになると、たとえば地域ごとのトラフィック(訳注=アクセス件数・頻度)や新規の投稿者など、複数の指標の減少に現れる可能性があります。
年次計画というものは、私たちの使命を永続的に 推進することをめざすべきであり、基本に複数年や複数の世代にわたる戦略を置かなければなりません。財団はウィキメディアの運動戦略を基盤として、私たちの複数年にわたる計画と予測に情報提供するため、引き続き次の3分野にじっくりと取り組みます。
- 財務モデル:ウィキメディアの財務モデルと将来の収益源としてのオンラインの資金調達の予測(これまでと同じ割合で成長し続けることはないと予想)、ウィキメディア寄託金の次の段階、ウィキメディア収益事業からこれまでに得た教訓。
- 製品と技術:財団の役割の中心にウィキメディア運動の技術ニーズ対応を置くこと、さまざまな寄稿者コミュニティのニーズを理解すること、将来の視聴者のために変革をリードすること、これらに加えて外部の風景の変化に応じたインフラの進化。
- 役割と責任:財団の中核的な役割と責任を理解するには、対話の焦点をもっと絞って枠組みと原則を確立すること。その趣旨は運動憲章の審議や、運動戦略の協議にさらに広範なインプットを提供するため。
昨年と同様、今年の計画も引き続き技術の重要性を中心に据えて焦点を当て、その前提条件としてピア・ツー・ピア(相互扶助)の知識の生産システムを全世界でリードするコミュニティの存在と、そのためにプラットフォームを置いてプロバイダーを務める財団の役割があります。今年の計画は包括的な目標4件(インフラ、公平性、安全と包摂性、有効性)を変わらず引き継ぎ、今年度の進捗状況は各目標ごとの作業と成果物を反映したものになります。
来年の取り組みは大まかに言うなら、ウィキメディアのプロジェクト群で利用者体験の向上に焦点を当てており、世界トップ 10のウェブサイトのサポートに必要なメンテナンスを継続して提供すると同時に、将来を見据えインターネットの変化に対応する投資も行います。 私たちは無償の知識にアプローチするもっと公平な切り口を開発しようと、知識の格差に言及しウィキメディア運動への参加を拡大、 外部の脅威が増大しても職員とプロジェクトを保護し、 ウィキメディアの財務の長期にわたる持続可能性と有効性を確保、運動を将来に向けて支えます。
財団の予算には、新たな収益の伸び率鈍化のせいでトレードオフが進行している点を反映しています。 この新たな現実に対応しようと、財団は過去2年で成長を大幅に減速し、昨年は人件費と経常経費を削減しました。 2022年以降、運動の実体への資金提供額は財団の成長率を上回っており、これは今年の計画でも変わりません。
この使命を一緒に進める
私たちの共同目標は、グローバルなコミュニティ同士、私たちと一緒により良く機能する手助けとなること、そして私たち全員が真に無償の知識のエコシステムにおける不可欠なインフラになる ことです。 以下の各節ではり具体的に、これら目標4つを財団のさまざまなチームが支援し、どう取り組むか、詳細を説明します。 これらはどれも私たちだけでできる仕事ではありません。 すべての人がすべての知識の総和を共有できる世界を創造するには、私たち全員が求められています。 だからこそ、私たちの核となる価値観の1つにあるとおり、私たちはこの使命に一緒に取り組むのです。
皆さんが取り組むオンウィキの共同作業は、ここメタウィキで、コミュニティ空間で、あるいは皆さんのプロジェクトの井戸端で(または同等の赤提灯など)でどんどん進めてください。
世界は今、私たちに何を求めているか?
本年、財団は4つの主要な外部のトレンドに着目しました。
- 消費者は情報が氾濫しているため、信頼できる人による情報の集約を希望
- 貢献者はオンラインで知識を共有する上で有益で強力な方法をたくさん備えている
- コンテンツの真実性はこれまで以上に争われ、高度に武器化されると予測
- 規制は試練や脅威ともチャンスともなり、司法管轄によって異なる
財団は昨年と同様に「世界は今、私たちとウィキメディアのプロジェクト群に何を求めているのか?」という問いかけから計画立案を開始しました。 私たちは外部の傾向について調査を実施し、私たちの仕事に与えた影響には、即時的な一口サイズの情報に重点を置いたものなどありました。 寄稿者を惹きつけようと、金銭その他のインセンティブが一部のプラットフォームで増加。 法律および規制の脅威、プラットフォーム規制のうち当財団および貢献者に向けた武器となる可能性のあるものが含まれ、さらに公共の利益を積極的に推進する機会。 そしてコンテンツの真実性の問題と、情報エコシステムに対する AI の影響があります。
昨年、これらの外部トレンドに対応して私たちは複数の措置を講じました。将来観衆チームの作業に投資する新たなこととして(Future Audiences team)、チャットGPTプラグインの開発、新しいプラットフォームの実験、ウィキメディアのプロジェクト群で人々は知識を扱うために生成AIをどのように使おうとするか、学びを発展させることなどが含まれます。 また、新しいワーキング・グループを設立してツールに投資し、拡張権限を持つ編集者がより適切かつスマートに巡回できるよう、誤情報や偽情報がウィキメディアのプロジェクト群で増加しそうになっても管理できるようにするつもりです。 この1年をついやし、これらの傾向をもう一度検討して学びを得ました。チャットGPT を一例にするなら、これはインターネット史上最も急速に成長したプラットフォームの1つではあるものの、ウィキペディアではその同じ期間に、読者のトラフィックに大きな変化は見られませんでした。当時の人々は依然として、世界の信頼できる正確な情報源として、ウィキペディアとウィキメディアのプロジェクト群を頼りにしていたいのです。
話し合い:2024
今年の年次計画に情報を与えようと、私たちは話し合い:2024という傾聴して共有し学ぶ対話に取り掛かりました。この取り組みの一環として、ウィキメディア財団の理事と幹部、職員はウィキ上で、個人や小グループを相手に130件の対話を開催しており – 対話は続いています。こうした対話は世界のあらゆる地域に広がります。私たちはコミュニティの多作な参加者から最近の加入者まで、技術ボランティアからスチュワードまで、イベント主催者から提携団体の主幹まで、いろいろな人から学び続けています。
これらの会話から得た教訓は、今年分ばかりか、直接、2030年以降に向けた計画にも反映され - 世代を超えて構築するプロジェクトのために何が必要か、以下を考えることも含まれます。
- ボランティアのニーズに関して、財団がツールのメンテナンスと測定基準を支援する技術インフラの更新に、今後も重点を置くべきだと私たちは常に聞かされてきました。このトピックは戦略的取り組みにとって最重要であり、使命を具体に実践するには、仕事を永続して続けるよう求められます。これらの議論のおかげで、私たちは正しい方向にさらに前進し続けると確認するのに役立ちました。
- これらの対話のほとんどで技術を取り上げた点が目立ちますが、ウィキメディアが人間主導の運動であることに疑いの余地はありません。これまで「人が肝心だ」という意見を聞き、さらによくあるジレンマと、さらには解決策を模索して、既存の編集者のニーズと新人を歓迎する取り組みとのバランスをどう取るかなど、よくあるジレンマを示そうとしました。人間主導という価値観はいくつかの対話の中で取り上げられ、その主題はウィキメディア次世代の人工知能の形成にどんな役割を担うかという点でした。
- 話し合い:2024の対話は、運動の実体が財団からの支援について、複数年にわたる財政的確実性の必要性を共有する機会も設けており、これを当年次計画に取り入れます。他の対話ではリソースが限られているからこそ、引き続き優先順位をつけるべきで、妥協(トレードオフ)をもっと明確に定義するべきだと強調されました。
- 最後に、運動憲章を定義するタスクが会話で何度か、話題になりました。具体的な内容は、運動戦略の勧告や原則に関する考察から、さまざまな構造の目的に関する問いかけまで、多岐にわたりました。(「この運動では常に先着順になのか?」)(「グローバル評議会が決めるべき事案とは? その根拠は?」「意思決定はなぜある核心から別の核心に移るのか?」「この問題は実際にはネジ釘なのに、私たちは金槌を使って解決しようとしている。」)。
当然のことながら、さまざまな視点がありました。(「多くの地域の編集コミュニティは、提携団体、ハブその他の組織統治の構造に即効性のあるメリットがあるとは考えていない」「コミュニティは依然として自分たちの意見を財団に聞いてもらえないと感じている」「地域によっては提携団体が行う良い仕事は、特にその団体がコミュニティと深く関わる地域では、賞賛に値する。」) そして、複雑で目の前にある課題について認識が深い点。(「コミュニティは非常に巨大で、全員を結びつけるのは難しい。」)
財団の2024-2025年次の各目標
年次計画の取り組み方
この文脈において、年次計画の今年の取り組み方は以下の設計原則に基づきます。
- 運動戦略に根ざすこと。知識の公理、サービスとしての知識を、運動戦略に結びつけること。
- 外部の視点を備える。出発点はまず、私たちの周りの世界で何が起こっているか考えてみること。外に目を向けましょう。私たちの仕事に影響を与える主要な外部のトレンドを特定。
- 製品 + 技術に注力。プラットフォーム提供者として財団は役目に集中し、製品と技術を引き続き大規模に推進。
- 年次計画の目標4件は年次をまたいで一貫。目標4件は昨年からそのまま引き継がれ、作業は以前の進捗状況に立脚して実施。
- 複数年のスパンをもっと長く。年次計画は複数年にわたって策定。当財団の収益モデルや技術戦略、運動の役割と責任は傾向を長期で考慮。
- 運動の団体に資金供与を増やす。運動の実体へ渡る資金は、財団の成長速度を上回る。
ウィキメディア財団は2024−2025年次に4つの目標を置いています。 これら組織単位の大きな目標は昨年の計画から変わっていませんが、それぞれの目標に属する具体的な取り組みと目標は進化し続けています。(財団の2024-25年次目標は、スライド形式でもご用意してあります。)これら目標はウィキメディア運動の戦略的方向性および運動戦略の勧告事項と一致するように設計してあり、私たちの仕事を形作る外部の主なトレンドに呼応します。
ウィキメディア財団の2024-25年度の目標は以下のとおりです。
- インフラ:サービスとしての知識を推進。ウィキにおけるユーザー体験を向上について、特に確立した編集者を対象にします。指標とレポートを強化。
- 公平性:知識の公平性を支持。運動の組織統治、リソースの公平な配分、知識の格差解消、運動の接続を通じて 意思決定における公平性 を強化。
- 安全と包摂性:私たちの人材とプロジェクトを保護。ボランティアに安全を提供するシステムを強化。私たちのプロジェクトの完全性をまもります。無償で知識を得られる環境を進化させます。
- 有効性:財団の全体的なパフォーマンスと有効性を強化。評価、反復、適応のプロセスを採用し、最大の効果をより限られたリソースで実現します。
2024-25年次の目標の概要
この節では財団の目標ごとに、主な作業を概説します。
目標1:インフラ:サービスとしての知識を進歩させるには、ウィキ体験、将来の観衆、信号とデータ・サービスに焦点を当てる。
- ウィキ体験
- 寄稿者の体験:寄稿者同士、経験が豊富な人、参加したばかりの人が団結して信頼できる百科事典を構築できるように補佐。
- 消費者の体験:新世代の読者と寄付者を巻き込んで、百科事典のコンテンツとの永続的なつながりを構築。
- メディアウィキ:メディアウィキのプラットフォームとインターフェースを進化させて、ウィキペディアの中核的なニーズを満たす。
- 将来の観衆
- 仮説を試験する。 未来志向の仮説を試し、技術のトレンドやオンラインの行動をより深く理解し、ウィキペディアのコンテンツの波及を広げます。
- 信号とデータサービス
- 指標:私たちの影響を理解し意思決定に情報を提供するには、重要な指標を追跡し公開します。
- 実験プラットフォーム:製品機能の影響をより適切に評価するには、堅牢な実験プラットフォームを立ち上げます。
目標2:公平性:知識の公平性を支援するには、運動の組織統治と意思決定、公平な資源配分、知識の格差を埋めて運動を結び付けることに焦点を当てます。
- 運動の組織統治
- 資源の配分
- 助成事業:助成金の交付と運動戦略を今後も連携させる。コミュニティと協力して公平なリソース配分を支え、提携団体の資金調達能力を強化。
- 知識の格差を縮める
- コンテンツの伸長:信頼できる百科事典コンテンツの伸長を加速します。私たちのツールと支援システムにアクセスしやすく覚えやすく、また容易に改善できるようにして、コミュニティが知識の格差を埋めることができるように支援します。
- つながり
- 運動をつなぐ:ウィキメディアンが仲間とつながり共有し、相互に学習するよう補助。(例:年間ウィキメディアン表彰、ウィキお祝い、地域およびグローバルな人脈、ウィキマニア、地域カンファレンス、ウィキメディア・ハッカソン、レッツ・コネクト。)
目標3:安全と包摂性:私たちの人とプロジェクトを保護するには、プロジェクトの組織統治を支援、人権や変化する法的枠組みへの対応、偽情報対策、ウィキメディアのモデルの推進に重点を置きます。
- 私たちの人々を保護
- 信頼と安全:人々を保護しコンテンツの整合性に対応するワークフロー、つまり仲裁委員会、スチュワードその他を手伝い、プロジェクトの組織統治を支援します。訴訟や過剰な法規制から保護する管理者と協働します。
- 人権:ウィキメディアのプロジェクト群において情報の共有と受信、責任を負って展開するよう、安全な環境をサポートします。
- 大規模な不正行為:インフラ、ツール、プロセスの改善により、コミュニティとシステムを大規模な不正行為からまもります。
- 私たちのプロジェクトを保護する
- 法律と規制:法的枠組みの変化に対応し、規制当局の教育、法的分析、説明責任などに対応します。
- 偽情報:強力で多様なコミュニティの支援を続け、最善の防御策とします。調査や専門家との人脈、法的弁護を介してボランティア活動を支えます。
- 私たちのモデルを推進
- 方針の擁護:ウィキメディアのモデルの価値を法律ならびに政策環境において促進します。
目標4: 有効性:財団の全般的なパフォーマンスと有効性の強化に向けて、財務の持続可能性と効率性を重視し、職員の関与と有効性を強化します。
- 持続可能な財務
- 収入:年間1億8800万ドルを資金調達し、長期的な収益戦略に投資します。
- 効率性:私たちの財務モデルが業界の最善手法を満たすもしくはそれを上回ると確認します。プログラム経費率を77%以上、維持します。
- 提携団体:提携団体が適切な立場にあり、複数年の予算編成と計画に携われることを確認します。
- 実績
- 人事のプロセス:職員の方針、プロセス、経験を強化して、職員の関与と効率を向上させます。
- 慈善活動の使命:職員が私たちの使命の大使となり寄付者や一般の人々をつなぐ機会を広げ、慈善文化に組織的に取り組む一環とする。
- 手順
- 財団のプロセスを合理化する:顧客中心でより効率的な自動プロセスを作成。(例: 資金調達の支払い手順のオーケストレーション※、エンタープライズのリスク管理、就業の環境、事業運営のワークフローなど。※訳注:状況の要素を計画または調整し望ましい効果を生み出すこと。)
- 四半期単位の指標:より強力なプロセスを導入し、年間目標に照らした四半期ごとの指標と説明責任を評価します。
昨年の年次計画と進捗状況
以下に、2023-2024年次計画の注目点と進捗状況を一目でわかるようにしました。年次計画の進捗状況は引き続き、目標ごとにDiffで(訳注:ディフ=公式ブログ)、またその他の情報更新で共有していきます。
目標1に向けた進捗:インフラ
- 貢献者用ツール:イベント発見に関する進捗は、ダークモード、新しいページ巡回、Android版アプリの巡回、段落の分割と適切な差分処理、iOS のウォッチリスト、編集チェック、ディスカッション用ツール、オートモデレーター、コミュニティ設定およびその他のツール類。
- ウィキメディア・コモンズ:Thumborにアップグレード、に対応OpenRefine(オープンリファイン)、ウィキメディア・コモンズ用アップロード・ウィザードとその他の作業。
- 十分なサービスを提供できなかった言語:新しい翻訳サービス – MinT を介して、オープンな機械翻訳を使ってサービスが十分に行き届いていない言語のサポートを強化、対応言語は200件超、そのうち44言語は初めて機械翻訳に組み込まれたものです。
- コミュニティ要望リスト:コミュニティ要望リストの手順を見直して改善し、多様な利用者のニーズ、技術がますます複雑になり、財団の製品および技術チームと技術ボランティア間の協力をより深くさらに適切に処理します。この要望リストの2022年版と2023年版の要望リストの調査結果より、リクエストに最も関連する技能と専門知識を私たちはどう結集して活用するかを示しています。 私たちはコミュニティ要望リストの歴史に関する研究を完了しました。
- AI:生成人工知能に関するコミュニティの対話を推めるのと同時に、プロジェクトの使命に適する機械学習(ML)ツール採用に対応する、 ML インフラを最新化します。これには、オフプラットフォームのチャットGPT のような AI アシスタントを介して、信頼できる検証可能な知識を提供できるかどうか、またその方法を試す実験を加えてあります。ほかにも実験によって、小規模なウィキ・コミュニティで ML をどのように使うと、受け取った編集の自動管理を支援できるか検討しました。
- メディアウィキ・コアのメンテナンスとサポート:将来のロードマップを一緒に考察し始めるのと並行して、さらに多くのリソースをメディアウィキの保守とサポート用ソフトウェアに充当します。
- メディアウィキ技術貢献者: 技術貢献者へのサポート強化のため、エンジニアがガイダンスとコードレビューに費やす時間がさらに増えました。メディアウィキのプラットフォーム・チームは、第1四半期にボランティアが提出したパッチ200件のコードレビューを実施。メディアウィキ・コアの貢献者で5件以上、パッチを提出した人数は昨年の第1四半期と比べると15%増。
- 新しいキャッシュセンター:知識の公平性に取り組む一環として、南アメリカに新しいキャッシュセンターを増設し当該地域のサイト応答性を高めます。
- ボランティアが報告した事案: Phabricator でボランティアから報告された問題を6ヵ月で600超過、解決しました。
- タイポグラフィの決定:は、ボランティアから直接、プロトタイプを募集するという研究手法を採用し、タイポグラフィの意思決定に情報を提供しました。
目標2に向けた進捗:資本
- ウィキマニア:東アジア・東南アジア・大洋州地域(ESEAP)出身のボランティアを仮想空間と現地とで142ヵ国出身の2800名超のウィキメディアンと結び – その方法でなければ、互いに力を貸したり学び合ったりできなかった人たちとつながりました。
- 共同で設けた空間:支援と協働を強化する共同空間づくり、相互学習プラットフォームのレッツ・コネクトやAfrika Baraza、中央と東欧のキャッチアップなど地域の集まりを含めて促しました。フランス語話者のウィキメディアン対応 WikiCauserieおよび南アジアの公開のコミュニティ集会。(Let's Connect、Afrika Baraza、Central and Eastern Europe Catch Up、South Asia open community call。)
- 運動カンファレンス:運動の高次の目標としてカンファレンスの財政支援があり、対象は教育ウィキ・カンファレンス、ウィキウィメン・サミット、ウィキウィメン・キャンプ、GLAMウィキ・カンファレンスを含みます。
- 協働:コミュニティと協力したプロジェクトには、アフリカの新規編集者、知識のジャーナリズム開拓表彰、ウィキソース・ラブ手稿学習提携ネットワークが含まれます。(Africa New Editors、Open the Knowledge Journalism Awards、WikiSource Loves Manuscripts Learning Partners Network。)
目標3に向けた進捗:安全と包摂性
- EU デジタルサービス法:欧州連合(EU)で運営されるインターネット・プラットフォームに対し、2023年8月に発効した新しいデジタルサービス法に準拠する措置を講じました。(DSA=Digital Services Act。)
- 権利擁護:ウィキメディアのモデルについて規制当局、政策立案者、政府指導者に知識を与えました(Advocacy)
- 開示:当財団の報告および開示義務について、透明性の補足レポートの発行を含めて満たしました。
- 偽情報:エコシステム全体で偽情報対策の取り組みをマッピングし、ボランティアとプロジェクトの整合性をサポート:反偽情報リポジトリでは、プロジェクトに関する偽情報に取り組みました。(Anti-Disinformation Repository。)
- ボランティアの安全:コミュニティが安全と包摂性をもたらす方法を支援するため、提携団体委員会、事案検討委員会、オンブズ委員会と連携。(Affiliations Committee、Case Review Committee、Ombuds Commission。)
目標4に向けた進捗:効果
- 効率性を高める:管理コストと資金調達コストに関する内部効率を高めることで、ウィキメディアの使命を直接、支える予算の割合を増やす方向で進んでいます(「プログラム効率性の割合率」)。
- 運動の支持に投資を追加:これにより効率が向上して助成金や機能開発、サイトのインフラなどの分野に投資資金180万ドルの追加が可能になります。